不正に使われる巨額の復興予算 自主避難者支援に回すべき

追及!「福島原発事故復興利権」②企業補助金に巨額不正

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不正を追及した宮本しづえ福島県議(共産党)に聞く

企業呼び込み優先避難者は後回し

約5億7700万円の補助金を不正受給していた株式会社ルキオ

 1633号から、福島復興予算の巨額利権問題の追求を始めた。特に計2千億円の予算が使われてきた「企業立地補助金」は数十億もの不正が続出。福島県議会の2016年度予算案質疑で、「この補助金で生まれた雇用は6600人に過ぎず、一人雇えば3500万円も支払われる計算になる」と割り出し、「避難者を切り捨て、県民利益にもなっていない」と追求した日本共産党の宮本しづえ議員に、問題の構造を聞いた。(編集部)

  補助金の不正が明らかになったのは、県や当局も否定できないほど大きくなったからで、まだ氷山の一角でしょう。

 もともと福島県の雇用政策は、外からの企業誘致がメインだったことが背景にあります。08年のリーマンショック時には全国最多規模の人数が派遣切りされました。企業誘致のチェックが甘いのです。加えて復興予算の巨額利権化。国の方針ですが、県がそれを言うのは言い訳です。企業ばかり呼び込み、避難者は追い出す方針を続けています。

 県予算が一気に倍増したので、14年に職員を300人に増やしましたが、足りません。過労で職員が病気になっています。予算消化のためには次々事業認可するしかなく、県が自腹を切っていないから審査も甘くなる。

 今春の支援住宅打ち切りで、支援住宅は1万2千戸から約100戸に激減しました。山形県への自主避難者を雇用支援機構が住宅追い出し裁判に訴えました。福島県も、県内の自主避難者も直接裁判に訴えられる法律案を、12月の県議会に出しました(19日に可決された)。県内に住む避難者5世帯が住宅の無償提供が終了したのに借り続けているとして、県は住宅の明け渡しや家賃の支払いを求めて福島地裁に提訴する方針なのです。

 5世帯は居住を続けており、県が実際に居住する自主避難者に対し、明け渡しを求めて提訴するのは初めてです。これが議決されたら、訴えられる世帯は3カ月後にはさらに20件も増えます。自主避難者への支援継続の必要は、今回の国連人権理事会でも勧告されています。

県知事が先頭に立って止めるべき

 県内は補助金不正への怒りはありますが、「避難者へ回せ」という世論は多くはありません。国が避難区域と賠償額を勝手に線引きしたため、県民が分断されているからです。『みんなが被害者なんだ』という意識で何とかオール福島の要求を作っていきたいです。

 本来、賠償や避難者支援は県知事が先頭に立って要求すれば、県民はまとまります。県知事がそれをせず、本気で賠償を求めていません。議会で追求したら自民党はヤジを飛ばすし、民進党も『いつまで言ってるんだ』という姿勢です。

 医療利権や福島イノベーション構想の利権と合わせると、あまりに問題が大きく、利権の闇が深く、調査や追求の手が回らないのです。復興とは何か、どんな未来を求めるのかを県民が話し合う場が必要ですが、避難で離れている人も多いから難しい。まずは目の前の避難者に寄り添うことで精一杯です。


 12月12日、復興庁は『原子力災害による風評被害を含む影響への対策タスクフォース』を発表した。被ばくの健康影響は一切無いと断言し、学校教科書を改定して被ばく安全論を積極的に広め、「福島を知ってもらう、食べてもらう、来てもらう」ために巨額の予算で運動を始める露骨な宣言だ。しかしこうした復興政策は、嘘と隠蔽と巨額利権化ですでに破綻している。今後も本紙は徹底追求、批判する。(編集部・園)

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