在米右翼「歴史修正主義者」を支持する日本政府(下)

LINEで送る
Pocket

「サンフランシスコ市長が 「慰安婦」像設置を承認(上)」より続く
https://jimmin.com/2017/12/13/san-francisco-approve-comfort-women-statue

山口智美(モンタナ州立大学教員)
筆者紹介・「アメリカの田舎にくらすフェミニスト。文化人類学者」

 だが日本政府は、市議に「恥を知れ」とまで言われた右翼「歴史の真実を求める世界連合会」GAHTと距離を取るどころか、今年2月、GAHTのグレンデール市に対して起こした訴訟を支持する意見書を米最高裁に提出している。

 決議された時点では、「慰安婦」碑のデザインは決まっていなかった。サンフランシスコでは、他都市のような記念碑や、ソウルやグレンデールと同じ「少女像」ではなく、独自作品を公募により選ぶことにした。

 応募作品の中から選ばれたのは、地元の彫刻家、スティーヴン・ホワイトの作品で、韓国人、中国人、フィリピン人「慰安婦」少女3人が手をつなぐ様子を、最初に名乗り出た元「慰安婦」の金学順が見守るというデザインの銅像だった。

 今年9月22日、よく晴れたサンフランシスコ市内で、新しい「慰安婦」像の除幕式が開かれ、私も出席した。市内公園スペースに設置された会場は満員で、さまざまなメディアが取材に来ていた。サンフランシスコ地元で関わった人たちのほか、李容洙、マイク・ホンダ元議員、スティーヴン・ホワイトらの姿もあった。

 市議会で中心となって奮闘したエリック・マー議員が感極まり、涙を流して喜んでいたことも印象的だった。ロサンゼルス、ワシントンDC、テキサスなど他の地で「慰安婦」問題に関わる人たちも除幕式に参加していた。

 喜びに満ちた場であったが、そこでも、日本の右派がサンフランシスコ市長や市議のみならず、彫刻家のホワイトにも数千通におよぶ抗議や嫌がらせメールを殺到させ続けたことが語られた。

 ほとんど同じような文面の大量の抗議メールに説得力はないどころか、迷惑以外の何物でもなく、しかも何度も送付が繰り返されてきた。除幕式の準備も、日本人右派の妨害を心配しつつのことだったという。

サンフランシスコ日本総領事・山田淳が除幕式当日に「慰安婦」像批判

 除幕式の前日には、地元紙『サンフランシスコ・クロニクル』に在サンフランシスコ日本総領事の山田淳の投稿文が掲載された。その中で山田は「『慰安婦』碑の建設が、本来なら戦時中の『慰安婦』の苦境に同情的であるはずの日本の人々全体を急速に遠ざけている。『慰安婦』碑建設運動は一方的な解釈に基づいたものだ」と批判した。除幕式で私が会った人たちは、この山田の記事に対して呆れていた。

 除幕式の時点では、像はCWJC(慰安婦正義連合)が所有しており、建てられたチャイナタウンのセントメアリーズスクエア内の土地も私有地だったが、その後、像と土地がサンフランシスコ市に寄贈されることに関して、市議会での提案、審議が進められていった。

 大阪市長は抗議の公開書簡を複数回送付し、姉妹都市破棄の可能性に言及した。さらに、面会も申し込んだが断られたという。大阪市長はサンフランシスコ市長に拒否権発動を要求し、日本政府も抗議を行い、日本の右派もまたもや市長への拒否権発動を求めるメールを呼びかけ、署名活動も行った。だが同時に、「日本軍『慰安婦』問題・関西ネットワーク」が主導し、大阪をはじめとした日本からの市民の声としてサンフランシスコの「慰安婦」像を支持し、大阪市長に反対する署名や意見を集めて、市長に提出している。「慰安婦」像に賛成し、大阪市長を批判する大阪をはじめとした日本からの声もたくさんあったのだ。11月22日に市長は決議に署名を行い、サンフランシスコの像は市が所有する像となった。

吉村大阪市長「慰安婦は公娼」

 これに対し、吉村大阪市長は「慰安婦」は「性奴隷ではなく公娼」という持論を述べつつ、姉妹都市の廃棄を宣言し、日本政府の立場として菅官房長官も遺憾の意を表明した。CWJCはこうした日本政府や大阪市のあり方を痛烈に批判している。CWJCのジュリー・タン共同代表は「サンフランシスコ市の市長も市議も、市民も、性暴力から全ての女性を守るためには日本政府による脅しに屈したりはしません」、さらにフィリス・キム理事も、「日本政府は世界中に歴史修正主義の立場を露呈したといえます」という声明を公表したのだった。

 サンフランシスコの「慰安婦」像は、日本軍の「慰安婦」問題など、戦時性暴力問題をわたしたちが記憶し、次世代に伝え、国の枠をこえて世界中の性暴力の被害者らと連帯し、性暴力がない世界を作ることを目指して建てられたものだ。日本の右派がいうような「反日」のシンボルなどではまったくない。韓国人、中国人、フィリピン人の少女が手を携え、それを金学順が見守るというデザインに、像を作ったサンフランシスコの人たちや、それを支持した世界の人たちの思いは見事に表現されている。

LINEで送る
Pocket

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。