ぷりずむ

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 その昔大杉栄が吉原を歩いていたとき、通りがかりに酒場で揉めているところに立ち会ったことがあった。酔っ払った男が窓ガラスをこわしたので、警察が呼ばれていたのだが、大杉はそこでこう言ったという。「この男は今一文も持っていない。弁償は僕がする。それですむはずだ。一体、何か事あるごとに、いちいちそこへ巡査を呼んで来たりするのはよくない。何でもお上にはなるべく御厄介をかけないことだ。たいがいのことは、こうして、そこに居合わした人間だけで片はつくんだ」。それで店主も男も納得したのだが、巡査だけが逆上して「きさまは社会主義だな」と言って大杉を逮捕したそうだ

 権力というのは、権力に従おうとしない人間を感情的に忌み嫌う。権力に対抗するものを抑圧するだけではなく、権力にびびらない、権力に価値をおかない人間をも忌み嫌う。大杉栄と伊藤野枝が殺されてしまったのは、そういった感情からだったように思えてならない。本紙編集長逮捕も、また然りだろう

 しかし、人民に拠って立ち、人民への信頼が深く、権力にはあまり依存しない社会こそが求められるべき社会だとすれば、人民新聞は文字通り人民の側に立った新聞として、今回の事件には負けられない。「そこに居合わした」人間のひとりとして、そう思う。(K) 

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