【時評短評 私の直言】アベノミクスからの脱却を

「経済」が心配なオッサンたちへ

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 株高が続いている。衆院選で与党勝利の予想が報じられだした頃から上昇を始め、10月中には史上初の16連騰を記録した。11月中旬のいまも日経平均株価は2万2千円台をキープしている。オッサン向け週刊誌は、来年には3万円までいくとか、その先は4万円も夢じゃないとか騒いでいる。はしゃぐオッサンは見苦しい。

 この株高は、「異常」な金融緩和に加え、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)などの「官製相場」で下支えされ、海外投資家の買いに後押しされている。利益を得るのは一部の資本と海外投資家だけだ。ところが、株価上昇をアベノミクスの成果だと考え、自分にもおこぼれがあると考えるオッサンは少なくない。もっとも、わたしのオッサン像は、オッサンとしての自己省察と、たまたま入った飲み屋での参与観察からできているにすぎないけれど。それにしても、梅田の格安居酒屋で飲んでいるわたしの観察対象は、海外投資家であるわけがない。どうしてそんな幻想に酔えるのか。

背広が魂を萎縮させる

 「とにかく経済だ。景気がよくなくては困る」とオッサンは言う。政治に求めるものは、それにつきる。背広を着ている人では、その傾向はさらに高まる。背広の人の多くは、頭の中も背広的フォーマットになっていて、飲み屋でも「御社」などと言う。資本主義的競争に追い立てられているので、青臭い理想主義やお花畑みたいな平和主義がきらいだ。で、クソみたいな現実にアジャストしてしまう。背広が魂を委縮させるのだ。

 「原発反対だなんて、経済が成り立たなくなったらどうする?」。まじめな顔でそう言うから困る。福島原発事故の後、全原発が停止してもなんの支障もなかったというのに。つまり、オッサンは自分で思っているほどリアリストではなく、「経済」というイデオロギーを信仰しているにすぎない。

 では、「経済」信者のオッサンが支持するアベノミクスとは何か? 2012年末に発足した第2次安倍政権は、(1)金融緩和、(2)財政政策、(3)成長戦略の3本の矢で日本経済を20年続く停滞から脱却させるとしてアベノミクスを打ち出した。しかし、その後5年近くが経過するも物価上昇率2%という「デフレ脱却」の目標は実現のメドがたっていない。また成長戦略の指標となる名目国内総生産(GDP)の伸び率は年間3%の目標に届かず、労働者1人当たりの実質賃金も低迷が続いている。

 当然、「アベノミクスは失敗した」と批判されるが、それに対して政権は「道半ば」だといい、そのつど「地方創生」「女性活躍」「一億総活躍社会」「働き方改革」などと看板を掛け替えてきた。さきの衆院選での選挙公約は「生産性革命」と「人づくり革命」だった。実体のないことばの羅列だ。そもそもの「デフレ脱却」だってただの宣伝文句だと思ったほうがいい。

 すると本当の目的は何か。「99%」のわれわれから「1%」の金持ちへの富の移転である。

 3本の矢の(1)は、「異次元の金融緩和」だが、利潤率が低下し、金利がゼロ水準にとどまっている状況で通貨を増発しても、増発分はそのまま資産経済に流れ込むだけだ。(2)の「財政出動」によるバラマキの結果、「基礎的財政収支(PB)の黒字化を2020年度に達成する」という「国際公約」を放り出して借金を重ねている。一方で財務省は、国の借金はすでに1000兆円、一人当たり800万円を超える(勝手に頭数に入れるな)から増税が必要だと言う。(3)の「成長戦略」とは、労働者の「非正規」化による搾取の強化、「社会保障」の切り捨てと消費税増税、そして原発輸出である。この3本の矢を支持する理由など、われわれには何もない。

放射能汚染・原発との闘いが前提だ
「魂」を解放するために

 アベノミクスからの脱却をどこからたぐりよせればいいのか? わたしは原発と放射能汚染に対する闘いが前線だと思っている。原発ビジネスにのめりこんだがゆえに東芝が解体するなど、成長戦略の柱とされる原発輸出で破たんが明らかになってきた。福島第一原発の事故処理費用や被害者への賠償はどこまで膨れ上がるのかわからない。核廃棄物の処理はめどさえたたない。斜陽産業であることはもはや明らかだ。

 ところが、「経済」が心配なオッサンに、なぜかこういう話は伝わらない。不都合な真実を見ようとしないオッサンの扱い方をどうするか? 廃棄物だ。金持ちのための経済政策におもねることで、おこぼれにありつこうとするいじましさをからかい続けよう。何のためにって? オッサンの魂を解放するためにだよ。

(編集部・下村俊彦)

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