問答無用の放射能帰還政策から 住民・避難者保護への転換を

追及!「福島原発事故復興利権」①起業支援金に巨額不正続出 福島県と県議会議員に聞く

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「企業立地補助金」「グループ化補助金」「ふくしまイノベーションコースト構想」除染利権、医療利権・・・

福島復興利権にむらがるゼネコン

福島の宣伝に駆け回るが、避難者には会わない県知事

 今年は森友・加計学園で、国策による税金私物化が大きく問題化した。しかしそれ以上に巨額で、莫大な人命に直接関わる利権政策が、問題にされないまま進み続けている。原発事故の福島復興・帰還政策だ。

 福島県には県予算とは別に、原発被害対策として国から毎年1兆円もの特別予算(=税金)が付けられ、多くは帰還前提の新産業の創出に使われている。「企業立地補助金」は、福島県での起業を公募し、起業費用の4分の3を県が負担するものだ。支払額は2千億円にも達し、雇用者一人当たり約3500万円も払われる計算になる。だが、額の大きさと認定の甘さから詐欺事件が続出し、9月には10億円もの不正受給が発覚した。

 他にも、特区構想、除染事業、がん医療施設に毎年数千億の予算が使われ続け、ゼネコン利権の温床と化している。一方、全予算の0.6%(2015年度)の約70億円に過ぎない自主避難者の住宅支援は、今年3月に打ち切られた。避難者は極限に追い詰められている。福島県ではすでに小児甲状腺がんだけでも193名出ているが、避難政策は一切行われていない。

 福島の復興利権問題は、その大きさに比べて全国に知られていない。安倍政権の原発事故隠しを構造的に批判していく必要がある。そこで本紙は、復興利権に関する調査を開始した。今号では、まず問題の全体像を紹介し、福島県担当者への取材、問題を追求した議員の話を掲載する。(編集部・園)

「原子力緊急事態宣言」による政府の独裁極まる「復興政策」

 まず、国の「福島復興・帰還政策」の中身は、国会のような公の場で全く議論も検証もされていない。沖縄の米軍基地建設と同じく、官邸・官僚・企業の独占事項となっている。さらに沖縄の基地と抵抗はまだ目に見えているが、放射能とその被害は見えにくいことが、暴政に拍車を掛けている。

 それは、3・11から発令されている「原子力災害対策特別措置法」に根拠がある。同法第15条、今も続く「原子力緊急事態宣言」は、住民避難などの原発対策の指示権限を首相に全て与えているからだ。

原子力本部会議と復興推進会議

 「安倍首相は緊急事態条項を作って独裁化を狙っている」と言われるが、それはすでに11年3月から始まっているといえよう。

 これにより首相官邸は現在、「原子力災害対策本部会議」と「復興推進会議」を同時に開き、そこで福島原発事故対策の全てを決めている。全閣僚出席で年2~3回しか開かれず、復興大臣がペーパーを読むだけで15分で終わる。詳細は復興庁、経産省、資源エネ庁などが全て決め、福島県に実行させる。

避難者を抹消 住宅支援の打切り

 この復興・帰還政策はまず、11~12年に環境省が除染事業を開始し、農水省は「食べて応援」を謳い、「福島には戻れる。復興できる」という虚偽の宣伝を始めた。除染事業はこれまで約4兆円に上り、労働契約違反や水増し請求が多発している。

 自民党政権になると強制避難区域12町村を解除し、今や残すは大熊町と双葉町のみ。そして今春に自主避難者の住宅支援を打ち切った。復興庁は2020年の「解散」が決まっており、東京五輪で「避難者も避難地域もゼロ、事故はすべて終わった」と宣言することが国家のプログラムと化している。

「グループ化補助金」数十件の不正

 こうした中、国の特別予算の目玉として、被災した中小企業の復興を支援する「グループ化補助金」と、福島での起業を支援する「企業立地補助金」が始まった。両方とも、復興・起業費用の4分の3を県が負担してくれるものだ。

 事業者が簡単な報告署を出すだけで、県が現地調査などもしないまま無条件に認めてくれるため、応募が殺到し、巨額の不正が多発している。

 まず「グループ化補助金」は、11年から3443件の申込みに対し894億円を提供。しかしNHKの今年3月の取材では、不正受給などと認定された企業や団体は少なくとも30。総額は37億円にのぼり、このうち返還が確認されたのは7億円に過ぎない。全ては税金だ。

「鮮味」「PCプラス」の虚偽請求

 2016年11月、経営者が同じ郡山市の「鮮味」と「PCプラス」による不正受給が発覚。実際には行っていない工場の修繕や、設備の更新費用を虚偽記載した報告書を提出していたとして、県は計約8400万円の返還を命じた。

 また福島市の「NPOほうらい」も、私的な買い物の領収書などを県に提出し、約540万円を不正に受け取った疑いで詐欺容疑で送検された。どちらも会社は破産手続き中で、補助金の回収見込みは立っていない。使い果たして逃げられている。県はようやく会社を訪れる再調査を始め、2020年までかかるため、今後も不正の発覚は確実だが、今も募集し続けている。

国と県が起業費用の4分の3を負担 多発する「企業立地補助金」不正

 「企業立地補助金」は、1億円以上の設備投資や、地元で5人以上を雇用することなどを条件に出される。全国でもトップ級の補助率と補助額が売り物で、創設当初は申請企業が殺到した。12年から471件に約2千億円が使われた。

大阪「CKU」の稼働しない太陽光発電

 東京地検は今年5月、県が交付する企業立地補助金約2億5千万円をだまし取ったとして、詐欺の疑いで、大阪府岸和田市の太陽光発電関連会社「CKU」の役員2人を逮捕した。補助金申請第一号の会社だ。「福島県白河市に工場を作った」と申請したが、県の立ち入り調査にはその都度「試作中だ」などと説明。そして工場は全く稼働していないことが判明した。

稼働しない工場に2億4千万円

 また4月には、同県広野町の「建誠」という会社の工場も、完成直後からほとんど稼働していない疑いがあることも分かった。県は補助金約2億4000万円の返還命令も視野に調査を進めている。いわき市に本社を置く建設会社が、除染で発生した汚染水の処理剤を製造する拠点として整備した。

 同社の製造プラントを約2億8500万円で工場に導入したとされる松江市の汚染水処理会社が、主要な機器類を7500万円で他のメーカーから仕入れていたことも分かっている。県は、補助対象のうち設備費が4倍近くに膨らんだ経緯について調査を進めている。

東京の「ルキオ」10億円もの不正

 さらに今年9月には10億円もの詐欺事件が発覚した。東京都世田谷区の印刷関連会社「ルキオ」が、南相馬市に印刷工場を建設して申請。10億7950万円が公布された。

 だが業務用プリンターなどの金額を水増し申請したとして、数人が逮捕された。その後の調査で、全額が不正申請に当たると判明。会社は破産手続きを行った。

補助金2千億円で6600人雇用 一人雇えば3500万円もの補助

 ここまで巨額の不正が続くのは、国の巨額予算と県の調査体制に問題があることは明らかだろう。不正発覚後も募集は変わらず続けていることも問題だ。そこでまずグループ化補助金を担当する福島県の経営金融課に電話取材した。

県の経営金融課に取材

──なぜこうした不正が起きたのか?

福島県:2012年のピーク時には2千数百件も申請が来たので、見逃した面はある。現在はハローワークで雇った12名と職員で再調査している。制度は経産省が決めており、県と協議している。

──福島県の調査体制に問題は?

県:企業申請を書類だけで認めていたのは、写真でも実態を確認できるからだ。体制に問題はなかった。帰還困難区域の再興がまだ残っているので、今後も補助金は続けていく。

県の企業立地課に取材

 続けて、企業立地補助金を担当する企業立地課にも聞いた。

──どのような意思決定で進めているのか?

福島県:県の商工労働部と経産省の話し合い。基本は税金なので経産省が決めている。再調査しているが公開するかはわからない。

──なぜ再調査中は公募を止めることをしないのか?

県:これは投資への補助金だから。広野町の例は再調査中だが、少しずつ稼働し始めたので補助は続けている。

──額が大きすぎるから不正が起きるのではないか。県として、打ち切った住宅支援などに予算を回せないのか。

県:国が決めたことなので何も言えない。

生まれた雇用はわずか6600人

 このように、まず国=経産省が福島県を企業特区化している。だが福島県も投資=復興ありきで進めている。その責任は国に投げているが、実際に動かしているのは県知事や職員だ。

 これは避難者だけでなく、福島在住の住民のためにもなっていない。企業立地補助金2千億円で生まれた県内の新規雇用は、約6600人に過ぎない。一人雇えば3500万円も払われる計算になるのだ。

 福島は放射能汚染で帰還できない地域が多く、教育や医療の人手不足が深刻化している。住民の生活や健康に予算が使われず、外から来る企業に食い物にされている状況だ。

闇の深い福島県立医大の医療利権

 放射能は目に見えない。だが健康被害は確実に増えている。福島県立医大は巨額の予算でがんセンターを新設した。国は被害増加を予測した上で、それを封じ込めようとしている。その矛盾が福島県内で巨額不正に表れている。健康被害は東日本全体に拡がっている。この復興・帰還政策の闇を解明し、変えなければ手遅れになる。

 次回は復興利権問題を福島県議会で追求した議員のインタビューを掲載する。

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