貧困の連鎖を防げ 生活保護でも大学に行きたい!

10・1反貧困ネットワーク大阪集会

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 10月1日、エルおおさか(大阪市)にて、「貧困の連鎖を防げ~生活保護でも大学に行きたい!」が開催された。会場定員を超す130名が参加した。
 基調講演「生活保護世帯の大学生の現状と課題~堺市実態調査から」は、桜井啓太さん(名古屋大学講師、元堺市生活保護ケースワーカー)が行った。現在、私たちが生きている社会では、生活保護バッシングや保護費削減、貧困の連鎖、奨学金問題、ブラックバイト問題など課題が山積し、人々の生を蝕んでいる。そのなかで、制度のなにを変えるべきか? 読者に資するよう、桜井さんの講演内容をまとめた。(編集部・ラボルテ)

困窮を不可視化させる「世帯分離」

 現在、生活保護世帯の子どもが大学や専門学校などに進学することは、原則的に認められていません。これは「稼働能力の活用」や「家族を扶養するべき」だという考え方によるものです。1970年まで、生活保護の適用は義務教育までに限られていました。
 高校進学時には、世帯分離を求められました。世帯分離とは、生活保護世帯内で子どもが進学する場合、「対象の子どもを別世帯として考える」という制度運用です。生活保護世帯と同居での進学を認めるが、生活保護費を支給しないことを意味しています。1970年に、高校進学率が8割を超えたことを契機として、「高校進学しても、子に対する生活保護適用を継続する」という世帯内就学の運用に変わりました。現在、世帯分離は大学や専門学校等に進学する子どもが対象となっています。
 生活保護を切られ、世帯分離とされた学生は、貸与型を中心とする奨学金とアルバイトで学費と生活費を賄っています。学生のバイト漬けや奨学金問題の最たる例が、世帯分離された学生です。世帯分離された学生は、困窮していても、生活保護ケースワーカーから支援はなく、「見えない存在」となります。
 そこで、堺市若手ケースワーカーが行ったのは、実態調査です。生活保護世帯で大学などに進学する学生は全国で1~2万人おり、堺市では168名となっています。実態調査への回答は106名です。調査結果を抜粋すると、(1)奨学金借入総額は、300万円以上が73%、400万円以上が55%です。(2)月間収入の7割を奨学金で賄っています。一般世帯の多くが学費・生活費を家庭援助で賄っていますが、世帯分離された学生は国民健康保険料や医療費も自己負担です。(3)将来の奨学金返済は85%が不安であると答え、経済的に勉強を続けることが困難だと感じる学生は53%でした。一方で、日本学生支援機構が一般世帯に行った同様の質問と比較すると3倍近くの差が出ています。

つつましい提案に過ぎない

 課題を3つに整理します。まず、(1)高学費の問題です。日本の高等教育の授業料は、OECD諸国内でトップクラスです。(2)乏しい奨学金制度です。実質的には教育ローンが多数を占めています。(3)生活保護の運用にある世帯分離の問題です。
 (1)と(2)の学費と奨学金制度については、幅広い低所得世帯の学生が苦しんでいます。課題を教育と生活の領域にわけると、高学費は教育領域の問題です。奨学金は、学費補填と低所得世帯の生活補助の側面があります。世帯分離については、生活領域の問題です。
 1970年に高校生の世帯内就学が認められたときは、生活領域の問題は生活保護によって、教育領域の問題は奨学金で賄っていました。2005年に、高校の学費が生活保護で認められるようになりました。いま行うべき提案は、「まず生活領域を考えてみませんか?」ということです。大学進学によって、世帯内の家賃・食費・光熱費を削られ、国保保険料や医療費を自ら支出しなければいけません。保護者が生活保護を受けているだけで、過重な負担を強いられています。
 上記の課題については、(1)高学費は教育無償化や学費減免が、(2)奨学金制度は給付型奨学金の拡充や返済困難者の救済が考えられます。これらと同時に、もしくはその前に、私は非常に控えめでつつましい「生活領域・生存権をしっかり保障しませんか?」という提案をしています。大学無償化を実施すると3.1兆円かかる一方で、生活保護世帯の学生の保護適用でかかるお金は100億円程度となります。300分の1の予算で、いま苦しんでいる学生の1万人~2万人に届くのです。
 1970年に厚生省保護課は、高校進学者への生活保護について、世帯分離から世帯内就学への運用変更に伴い、以下のような説明を行いました。「(1)保護の受給は一時的現象であり、教育を受けることはその者の一生の問題である。(2)被保護世帯は子どもの教育に将来の希望をかけている。(3)社会は高能率化時代に入り、相応の高等教育が要請されている」。
 冒頭に述べたとおり、高校進学率が8割を超えたことも、運用を変えた理由でした。47年経ったいま、大学進学率80.6%となり、上記の厚生省の説明は現代にもそのまま言えます。法改正も必要なく、局長通知によって1カ月で実現可能です。
 大学に行ったくらいで生活保護を切るような制度の現状を変えませんか? 制度は変わらないものではなく、私たちを分断するものでもありません。制度は私たちの生活を守り、社会状況に応じて変えなければいけません。私たちの権利や制度は、私たち自身が声をあげることによって、変えることができるのです。

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