【メディア時評】改憲に反対する市民・野党統一戦線を

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浅野健一(ジャーナリスト/同志社大学大学院社会学研究室博士課程教授)

国会前で森友・加計疑惑を追及

 安倍晋三首相の「腹心の友」加計孝太郎氏が理事長を務める「加計学園」の獣医学部新設をめぐり、11月10日、大学設置・学校法人審議会(大学設置審)は、新設を認める答申をした。答申は2回「保留」になっており、専門家としての良心に従って判断すると思っていたので残念だ。

 菅義偉官房長官は10日の会見で、「国会で説明する」と述べている。野党、市民、メディアは、政府(文科相)に対して、特区認可条件である「既存の獣医学部にはない先端的な教育研究が可能か」などの「石破4条件」に合致しているかどうかの厳密な審査を求めるべきだ。民進党の森友・加計問題プロジェクトチーム(PT)の主要メンバーが衆院選で落選したため、野党の体制作りが急務だ。

 森友・加計告発プロジェクトの市民たちは9日夕から、文科省と国会議員会館前で加計獣医学部反対を訴えた。「総理のご意向」で行政がゆがめられて決まった加計獣医学部の開校までには、まだ高いハードルが待っている。

 まず、大学設置審は、特区活用の是非については審査をしていない。前川喜平・前文科次官は「設置審は普通の設置基準に達しているかを審査しているだけで、特区での事業者決定のプロセスの再検証が必要だ」と述べている。

 次に、加計学園が今治市(62億円)と愛媛県(34億円)から提供される予定の補助金計96億円はまだ支払われておらず、市議会・県議会の承認が必要だ。

 「今治加計獣医学部問題を考える会」の黒川敦彦氏らが入手した、加計獣医学部の図面、建築費の分析によると、建築費約50億円の水増し疑惑、バイオハザードの危険性などが出てきている。これを受け、今治市は専門家による第三者専門委員会を設置して審理中だ。

 NHKは10日夜のニュースで、大学設置審の専門委員会(獣医学などの専門家14人)で、委員の間から「学園の申請内容は、いわゆる4条件を満たしていない」という意見が出されたが、これに対して文科省の担当者が「4条件は特区での検討事項であり、この審議会では審査しない」と繰り返し説明した、と伝えた。また、委員の1人は「特区の中では加計学園の獣医学部は4条件を満たしているというが、学園から提出された計画をみるかぎりそうは思わなかった」と話している。

 11日の各紙によると、専門家委員会の10月2日の議論では、「依然として実習体制が十分でない」などとして、認可に向けた結論を出すことに異論を口にする委員もいた。しかし、取りまとめ役を務めた委員から「設置審としてこれ以上認可を先延ばしにすれば、学園側と訴訟を含めたトラブルになる可能性がある」という発言、「訴訟という言葉を聞かされ、何も言えなくなった」と話す委員もいた。不当発言の委員の実名を明らかにすべきだ。

 大学設置審の一専門委員は、テレビ朝日の取材に「設置を認めないという判断はできない雰囲気だった」と述べている。設置審の議論も、安倍首相と加計理事長の意向を忖度したのだ。

希望の党・玉木共同代表へのメール

 安倍首相が解散に打って出たのは、国会での森友・加計疑獄追及を免れるためだった。もし、昨年の参院選のような全野党共闘ができていれば、衆院選での自公の圧勝はなかったし、加計獣医学部の開設もより困難になっていたはずだ。

 新聞・通信各社の分析では、衆院選の小選挙区で野党が候補者を1人に絞っていれば、野党はプラス約80議席を獲得できていた。加計疑獄で青息吐息だった安倍自民党を助けたのが、小池百合子都知事と前原誠司・前民進党代表だ。

 小池氏が民進党からの入党希望者に踏ませた踏み絵の中に、外国人地方参政権反対が盛り込まれたことと合わせ、「(小池氏は)巧妙な極右勢力だ」(東京新聞)とも指摘されていた。

 10月10日、「希望の党」共同代表に玉木雄一郎氏が選出された。同氏は、香川2区選出で、戦争法案の国会審議では強行採決に反対して闘ったが、会見では、安全保障法制を容認し、憲法9条見直しの姿勢を示した。同氏は香川県立高松高校の後輩で、民進党の森友・加計PTが7月、黒川氏を招いた時に名刺交換した。私は10月3日、玉木氏に次のようなメールを送った。

 希望の党が踏み絵にした「外国人参政権反対」は、自公連立合意事項の一つ。希望の党は、自公より右のネオファシスト政党ということになります。
 憲法の前文と9条を守ることに国民の多数は賛成しています。安保法制は日本国憲法に違反しているというのが、憲法学者の大多数の見解です。玉木さんが強行採決に体を張って反対した映像をもう一度見て、人民に転向の理由を説明してください。憲法を擁護しないという誓約書を書いて選挙に出るのは、憲法違反ではないでしょうか。玉木さんの今回の行動は、歴史の審判を受けることは間違いないでしょう。私は、枝野さんの新党と市民団体が中心となって、安倍政権で成立した教育基本法改悪、特定秘密保護法、戦争法、共謀罪を廃止するための政権が確立されるよう努力します。

 人民の敵、前原、玉木両氏らの野党共闘妨害により、安倍首相は来年9月の総裁選まで権力を維持することになった。有権者の半数が棄権した衆院選で、憲法改悪(壊憲)に向かう大政翼賛会体制ができ上がった。安倍首相の下での改憲に反対する統一戦線の構築が必要だ。「希望の党」の良心的な議員が、立憲民主党に移籍するか、民進党に戻ることを期待したい。

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