「パナマ文書」調査報道 徹底究明する海外ジャーナリズム 沈黙する日本のメディア

権力批判できない日本のメディア

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編集部 松永了二

 「パナマ文書」報道に加わっている女性ジャーナリスト、ダフネ・カルアナガリチアさん(53歳)が、地中海のマルタ島で10月16日、車を運転中に爆殺された。
 彼女は「パナマ文書」の調査をもとに、人口42万の小国マルタのムスカット首相夫妻の脱税疑惑などを報じていた。爆殺首謀者は、明らかにムスカット首相周辺による権力犯罪の疑いが強いが、捜査機関によって真相は隠ぺいされる可能性が高い。
 マルタ島そのものがEUのオンライン賭博におけるタックス・ヘイブンの温床で、同国のGDPの12%の歳入があるといわれている。当然彼女はその調査報道にも携わっており、首相の夫妻をはじめ政権の複数の閣僚もマルタでの銀行免許付与の見返りとしての報酬を受け取るために、パナマの銀行に隠し口座を持っていたことを暴露した。
 そのため、彼女はたびたび脅迫を受けていたが、ひるむことなく与野党を問わず政権内部の腐敗を追及してきた。殺害される数時間前にも、同国のキース首席補佐官を、政府の影響力を使って私腹を肥やしている「ペテン師」だと批判していた。彼女には夫と3人の息子がいる。

日本のメディアの無反応はなぜか?

 国際ジャーナリスト協会は、早々と「ジャーナリストに対する暴力に抗議し、マルタでの報道の自由について深く懸念する」とのコメントを発表した。16日には彼女を追悼する市民集会が開かれ3000人以上が集まり、彼女が民主主義の支柱であったことをたたえると同時に、真相の徹底究明を訴えた。
 日本では、このマルタでのダフネ・カルアナガリチアさん爆殺事件の報道はなぜか小さな扱いで、「パナマ文書」調査チームにも参加している朝日新聞をはじめ、抗議声明などを出した報道機関はない。
 日本のメディアがこの事件に及び腰なのは、「パナマ文書」の中に日本有数の資産家や企業トップの名前があり、スポンサー離れを恐れているためなのか疑いたくなる。「森友・加計学園問題」の追及に現れているように、日本のメディアの権力犯罪、脱税、裏金作りなどの持続的調査報道は弱い。

「パナマ文書」とは
 タックスヘイブン(租税回避地)の会社の設立などを手がける中米パナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」から流出した内部文書。1977年から2015年にかけて作られた、1150万点の膨大な電子メールや文書類。21万余の法人の情報の中には、10カ国の現旧指導者、その親族ら数十人が関係する架空会社が含まれている。芸能人やスポーツ選手といった著名人の幽霊会社もあることが分かっている。
 しかし、膨大な資料の調査には時間を要し、まだ全貌は明らかになっていない。2015年、国際調査報道ジャーナリスト連合は、入手したこの文書の調査への協力を、世界の良心的ジャーナリスト、報道機関に依頼した。それに応えて彼女のように調査に協力しているジャーナリストが世界各地で活動している。

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