「共謀罪」を廃案へ

「森友」「南スーダンPKO」の追及を持続し

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通常国会後半戦へ

反改憲運動通信編集委員会 国富建治

暴走する安倍自民党――「在任中に改憲」の決意表明

(絵・橋本勝) 

1月20日、米トランプ大統領の就任式と同日に始まった日本の2017年通常国会(第193通常国会)は、3月27日に新年度予算案が成立したことで後半戦に入った。6月23日告示、7月2日投票の東京都議選という、今後の国政にも大きな影響を与えざるを得ない日程が確定しているために、6月18日までの会期を大幅に延長することは不可能である。
 会期後半の最大のテーマは、国会で3度にわたって廃案になった共謀罪法案を、これがなければ2020年東京五輪も開催できなくなるとでっち上げて上程した、「テロ等準備罪」法案である。
 1月20日に行われた施政方針演説で、安倍首相は「国づくり」という言葉を乱発(「世界の真ん中で輝く国づくり」「力強く成長し続ける国づくり」「安全・安心の国づくり」「1億総活躍の国づくり」「子どもたちが夢に向かって頑張れる国づくり」)し、その集約点として「憲法審査会」での改憲論議を進めようと訴えた。
 2月の訪米で、トランプ米大統領との親密な「別荘会談」とゴルフで意気投合した安倍首相は、3月5日に開催された自民党の党大会で、党則改正により総裁任期を2期6年から3期9年にまで延長し(つまり2021年秋まで)、自分の首相任期中に憲法改悪を必ずや強行するという決意を表明した。実際、安倍自ら自民党の今年度運動方針素案にあった「憲法改正原案の作成・検討を進める」という表現を、「憲法改正原案の発議に向けて具体的な歩みを進める」と、わざわざ「発議」という具体的な手続きを入れた文章に書き直させた、と報じられている。
 まさに「任期中の改憲」を絶対に実現するという「決意」が示されている。

PKO撤退と「日報」隠蔽責任

 野党の足並みの乱れによる安倍内閣の支持率の高さもあって、安倍首相は任期中の改憲に相当の自信を持っていたはずだ。しかし、今、明らかに安倍政権の土台が大きく揺れ動く可能性が幾つも浮上している。
 第1に、「南スーダン」PKO派兵の問題だ。「内戦」状況という情勢認識をめぐって否定し続けてきた安倍政権の国会答弁が、「破棄した」とごまかし続けてきた「日報」の存在が明るみに出された結果、まさに虚偽だったことがはっきりした。しかも、当初の説明であったように統合幕僚監部内の電子データに残っていただけではなく、陸自司令部自身の複数のコンピュータに「廃棄」したはずの「日報」データが残っていた。そして、ウソがばれることを覆い隠すために、「日報」データ不開示決定後の今年2月末になってから消去命令が出たのである。
 「武力を伴った衝突」はあるが「戦闘」はない、なぜなら「戦闘」があれば憲法9条にふれる、との珍答弁を繰り返してきた稲田防衛相の責任が厳しく問われる事態を恐れた安倍内閣は、「任務終了」を理由に5月いっぱいで現地からの自衛隊の撤退を決定せざるを得なかった。これは、現地の事情にかかわりなく、もし自衛隊員に犠牲者を出すような事態になれば責任が問われる、というまさに手前勝手な判断である。この点での安倍政権の責任、とりわけ防衛省の隠ぺい工作の責任が厳しく問われざるを得ない。

「森友」スキャンダル幕引き許すな

 第2は、いうまでもなく「森友学園」問題である。これこそ安倍首相本人、昭恵夫人の責任が根本から問われるスキャンダルにほかならない。
 幼稚園の子どもたちに「教育勅語」を暗唱させ、「安保法案が通ってよかったです」「安倍首相ガンバレ」と叫ばせる「森友学園」の開設に、国有地のタダ同然での引き渡しをはじめとするさまざまな便宜を提供し、一時は「名誉校長」まで引き受けた安倍昭恵を通じて100万円のカンパを安倍首相自ら「森友学園」に送っていたという、国会「証人喚問」の場での「森友学園」元理事長・籠池泰典の証言や財務省理財局との一連のやりとりは、安倍政権の根幹をゆるがす事態を意味している。
 それは「森友」問題にとどまらず、安倍改憲路線の全体構造が、どのような力学のもとに現に作動しているのかを解明する課題を私たちに突きつけている。
 おりから安倍内閣は、3月31日に「教育勅語」について「憲法や教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまで否定されることではない」との閣議決定を行った。「籠池」を切った上で、彼が進めてきた教育を否定することはしない、という意思がそこに示されている(新学習指導要領で行われる「領土」教育ともそれは連関している)。
 そして、後半国会の最大の焦点は、最初に述べたように「共謀罪」(「テロ等準備罪」法案と名づけられた)法案である。朝鮮半島をめぐる情勢が緊張の度合いを高める中で(北朝鮮の相次ぐ核ミサイル実験、米韓合同軍事演習、韓国大統領選、そして米中首脳会談など)、こうした情勢にさまざまな分野での運動を積み重ねながら合流していく闘いが、国会内での審議とも連動しつつ意識的に追求される必要がある。

沖縄の闘いに連帯を

 そして何よりも、その中で辺野古新基地阻止を闘う沖縄の人びととの連携を追求していかなければならないだろう。安倍政権を包囲する民衆運動の陣形を、着実に積み重ねていく意識を研ぎ澄ましていく努力が、あらためて求められる。

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