ぷりずむー1607号

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 今年も味噌を仕込んだ。大豆を炊いて、つぶして、麹と塩を揉み込んで、あとは秋口までひたすら待つだけ。麹カビが、大豆をゆっくり発酵させて、味噌にしてくれる。人間にできることは、雑菌がなるべく入らないようにすることと、日陰に保管しておくことぐらいだ▼冬は季節が止まっているかのようで、ゆっくりと動いている。寒い寒いとぼやきつつも、2月ともなると、だんだん陽の光は明るくなり、日照時間も延び、気づけば地面では緑が萌え始めている。やってくる鳥の種類が変わっていたり、同じ鳥でも鳴き声も変わっていたりする。花粉症の人には迷惑な話だが、目に見えなくても空気には花粉が飛び交い、雨のにおいも変わってきている▼あたりまえのことだが、この世界には人間だけが生きているわけではない。いろんな生き物が生きていて、そのめぐりのなかに自分も生きている。しかし、ややもすると自分の意識には人間のことしか入っていないし、人間関係だけで悩んでいたりする。とくに、気忙しいときは視野が狭まってしまっている。いや、視野だけではなく、五感がみんな狭まってしまっているのだろう。だから、何か行き詰まっているときは、空を見たり、地面を見たり、耳をそばだててみることにしている。この季節、いろんな生き物のざわめきが、春を教えてくれている。(K)

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