いま米国では 警察権力がのさばるトランプ時代の予告編

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トランプ就任式の催涙スプレーと特殊閃光手りゅう弾

 

1月20日 「truthout」ブルックリン在住フリーランス・ジャーナリスト ジョン・ネフル

 翻訳・脇浜義明
 1月20日、トランプの米大統領就任式当日の朝のホワイトハウス公式ウエブサイトには、「この国の反警察的雰囲気は間違いである。新政権はそれを撲滅する」という声明が載り、反警察ムードが高い周辺コミュニティへの敵意をむき出しにした。
 前日の19日、「オルタナ右翼」と称する白人至上主義者やネオ・ナチ集団がトランプ支持の集会で反ファシスト集団と衝突した。警察は反ファシスト集団の方を催涙ガスを使って弾圧した。デモ隊は空き瓶や花壇の石を投石して、警察隊と右翼隊に応戦した。
 就任式当日は、もっと大規模な各種デモと衝突があった。女性デモ・集会は翌日の土曜日に計画されていた(訳注・翌日のユーチューブには、整然としたデモにもかかわらず警察隊が催涙スプレーを使って弾圧する光景を捉えた動画が投稿された)。
 効果的な抗議活動は「ブラック・ライヴズ・マター」ワシントンDC支部の闘いで、警察本部近くの検問所を数時間機能停止に追い込んだ。活動家が幾重もの人間の鎖を作って、式典に参加する人と車を止めたのだ。スキンヘッドのバイカーが活動家の一人を殴る事件もあった。
 10時20分頃、100人ほどの黒いユニホームの抗議者が集会を終えてデモに合流、ジグザク・デモで「穏やかに政権移動させないぞ!」「レイシストを震え上がらせよう!」と気勢をあげた。最初警官隊は後についていただけだったが、やがて催涙スプレーとスタン躑弾で襲撃、デモ隊だけでなく取材中のジャーナリストも攻撃された。スタングレネード(特殊閃光手りゅう弾)の爆発音が緊張を盛り上げた。興奮した抗議者がバンク・オブ・アメリカのATMを壊し、新聞販売機を道路へ放り投げた。12番街で警察隊はデモ隊を車両や警官の隊列で包囲し、しばらく睨み合いが続いた。やがて10人ほどが警官の方へ歩いていった。警官が彼らに襲いかかり、2人が交差点中央でねじ伏せられ、逮捕された。「見ろ! 逮捕理由も権利の朗読もない不法逮捕だ!」と、2人は仲間と見物人に叫んだ。
 警察は「やかん」(警察車両と警官でデモを封じ込める戦略)で約70人の活動家を封じ込め、巡査部長が「全員逮捕」を告げたが、罪状や逮捕理由を告げなかった。
 11時頃、膨れ上がる抗議デモに警察は催涙スプレーとスタン躑弾を大量に使い始めた。午後2時、会場付近にまで膨れ上がったデモの真ん中に向けて、スタングレネードをどんどん打ち込んだ。

闘いの幕が開いた

 トランプに関しては何をするか分からないと言われているが、警察力行使に大変化があることだけは確かだ。彼が司法長官に指名したジェフ・セッションズは指名承認公聴会で、人権侵害を追及するオバマ政治を踏襲するなと司法省を指導する、と言った。「警察が不当に非難・中傷されている」「女性や性的嗜好が異なるものが差別されているとは思わない」。
 ファーガソン、シカゴ、ボルチモアでの警官の黒人射殺事件に司法省公民権課は過剰反応して警察を非難したため、地域の警察は正常な活動ができなくなっている、と公民権課を非難。同課の予算を減額し、住宅補助や家庭内暴力犠牲者に対する援助などを含む「暴力被害女性に対する救済」プログラムを廃止することを明らかにした。
 これに関し、「憲法が保障する権利センター」のダリュース・チャーニ弁護士は「州や地方の警察の違法な差別的権力行使に対する連邦政府の介入が大幅に後退する」と言った。州警察や市警察や地方警察は中央政府の補助金をもらっているので(9・11以降地方警察は中央補助金で軍隊並に武装化した)、トランプ政府の影響に支配されるのは確実。
 フージョン・センター(州、市、地方の警察と連邦警察が情報を共有するハブ)やその他の地方-連邦連絡網を通じて、中央の政治的意向が地方に伝達する。最も問題ある中央―地方連携は、移民国籍法第287(g)で、それは地方警官に国の移民税関捜査局員の代理として行動する権限を与える規定である。トランプ選挙を応援した警察友愛会は、トランプが就任後100日間でなすべきことを書いた白書を発表した。そこには、287(g)の強化と人種プロファイリング(人種的要素に基づいて容疑者を選定すること)の正式復活が提案されている。また、オバマの警察武装化の縮小を目指した大統領令13688号の廃止を求めている。この大統領令は、地方警察が軍のお払い兵器の使用を認める1033プロジェクトを厳重に監視することも命じている。
 黒人を犯罪者扱いする警察行政が、トランプの最優先政策となるであろう。彼は、憲法違反である「ストップ&フリスク」(警官が路上で任意に人を止めて所持品検査を行う行為)を復活させるつもりである。去年の夏、彼は、ブラック・ライヴズ・マターが警官殺害を呼びかけているというデマを流したことがある。チャーニ弁護士は、「ストップ&フリスクが差別的で憲法違反で人道に反するばかりでなく、警察活動戦術としてもマイナスである。なぜなら、黒人敵視は警察とコミュニティの間に楔を打ち込み、極端に使われるとかえって治安悪化を招くことになるからだ」と言っている。
 聞くところによると、トランプは自分専用の個人的警備団を雇う計画をしているらしい。反対者を自分に近寄らせないばかりでなく、誰が反対者であるかを調査し、反対行動をさせないように排除する計画だという。
 2011年のウオール街占拠運動のとき、トランプは政府の姿勢が甘いと非難した。その彼が大統領になることを見越して、すでに6州でデモや占拠に重刑や重罰金刑を課す州法が提案されている。ノース・ダコタのスー族のパイプライン反対運動を妨害するために単車で暴走した右翼スキンヘッドの加害行為が問題になったとき、州議会のケイス議員は、「単なる交通事故に過ぎない」と言い放っていた。
 合衆国の足元から地獄の蓋が開いた感じだが、同時に彼の就任に抗議する多くの人々、女性、黒人、先住民、移民、障がい者、労働者、LGBTQA、公民権活動家、学生など数十万人のデモがあった。闘いの幕が開いたのだ。

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