いま米国では 米国で繰り返される放射能安全神話

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フクシマの放射能汚染物質が米西海岸へ

 ジャッド・エングキテラ(エンヴァイロニュースのスタッフ)2016年12月31日 「truthout」(米のニュースサイト) 翻訳・脇浜義明

体内に入れてもいいと嘘をつく米国やカナダの専門家

 2016年12月12日、『エンヴァイロニュースUS』のエマーソン・アーリー編集長が、「ついにやってきた。フクシマの放射能汚染物質が西海岸に」と題する記事を書いて、世論に火をつけた。
 「『生物にとって許容範囲な安全な被曝レベルはない』と医学や疫病学研究者が繰り返し言ってきたが、まさにそれに尽きる」のに、『NBC』『ニューヨーク・ポスト』『USAトゥデイ』『インクイジター』などのメディアは、米国やカナダの「専門家」に嘘の情報を流させている、と指摘した。例えば、最近鮭から検出されたセシウム134の量は人間の健康に害にならない、と言わせていることを引用した。
 進歩的評論家のトム・ハートマンは、アーリーの記事を自分の番組で読み上げ、放射能の働きをジャーナリストとして解説し、体内に入れても「安全」という「専門家」の主張に疑問を呈した。
 「放射性物質は崩壊するとき放射能を出す。その放射能が細胞核や細胞核の核小体の中のDNAに接触すると、DNAを変化させ、がん発生などにつながる。あるいは単に細胞死滅に終わるだけかもしれないし、あるいは予測できない突然変異を起こすかもしれない。専門家は『100万個の細胞が被曝しても、がんに変形する可能性があるのはそのうちの1個か2個だから、そんなに心配することはない』と言うけれど、一番先に被曝した1個の細胞が癌化する場合もあるわけです。だから、被曝に安全基準があるというのは、まったくのデタラメなのです」。
 アーリーはその後声明を、出した。「メディアが些細な問題の些細なことを繰り返して報道するのはともかく、低水準の放射能摂取は安全であると、自分でも分かっていないことを繰り返し報道するのは、無責任であるばかりか、犯罪行為である。医学や病理学が50年前から放射能安全説の欺瞞を暴いてきた。ニュース編集者は、読者に放射能摂取を安全だと信じ込ませないように、万全の注意を払うべきだ。微量の被曝でもがん発生の可能性があるのだ」。
 有害物質・疫病登録局(ATSDR)が出した「セシウムに関する公衆衛生報告」(2004)によれば、「安定した放射性セシウムは食事、飲料、呼吸、接触を通じて体内に入ります。セシウム化合物を含むものを食べ、飲み、吸い込み、触れると、セシウムは水溶性だから容易に血液中に入り、体中を駆け巡ります。味も匂いもないから、分からないのです」。
 セシウムは、食物連鎖過程で体外に排出されることはなく、蓄積される。セシウムが小魚の体内に入り、小魚を食べる大きな魚も汚染され、それを食べる人間の体内にも入って、人間の体内から排出されず、体内で減衰もしないで、蓄積される。海産物を食べれば食べるほど、放射能内部被曝量が多くなる。
 セシウムを発見した研究者は、海遊同位元素摂取とレントゲンによる被曝とを同じだと考える間違いを犯した。飲食や呼吸から体内に入った内部粒子放射体が特に有害であることを、見落としたのである。

思い出すべきユタ州の被爆者や60年代の研究者弾圧

 「放射性核種を含む食物摂取はとりわけ危険です。放射性粒子を食べたり吸い込んだら、それは体内でずっと放射能を照射し続けます」と、アラン・ロックウッド医学博士が『フォックス・ニュース・ヘルス』で書いた。同じように同誌で、「社会的責任」を果たす医師団(PSR)のアンドリュー・カンター会長も、「子どもは特に放射能の影響を受けやすく、成人と比べてがんにかかる可能性が非常に高い。子どもには、絶対放射能汚染食物を与えてはいけない」と書いた。
 政府が放射能汚染から守ってくれると期待する人は、ユタ州の死の灰被爆者のことや、1960年代の研究者弾圧のことを思い出すべきだ。『L・Aタイムズ』のジョン・ゴフマン死亡記事を引用すると、「ローレンス・リバモア国立研究所」のジョン・ゴフマンとアーサー・タンプリンは1969年に、低線量放射能被曝は政府発表より20倍も危険であることを示すデータを明らかにした。2人は、データ発表を抑える圧力に逆らって事実を公表した。彼らは、研究費を失ったばかりか、研究所における地位も失った。しかし、その後2人のデータの正当性は証明された。
 PSRの前会長ジェフ・パターソンは、2011年3月のフクシマ・メルトダウン直後に、「食物、飲料水、その他を通じて放射性核種に被曝することに関して、安全な水準などあり得ない。ヨウ素131とセシウム137のような放射性核種への被曝は、がん発生を増加させる。だから、食物や飲料水に放射性核種が混入するのを極力阻止する対策を講じるべきだ」と警告した。
 アーニー・ガンダーセンは「日本政府は、住民を帰郷させるために最高被曝許容線量を従来の20倍に引き上げた」と、エンヴァイロニュースにメールを送った。米政府と環境保護庁(EPA)も原子炉事故の際、同じような案を検討したことがある。実際、食物に関して言うと、米の放射線許容水準は、日本のそれより12倍も高いのである。「住民の健康よりも企業の利益を優先しているからだ」とガンダーセン。
 いったい食物連鎖汚染の除染を、誰が、どのようにやるのだろう。人々は、政府発表やメディア報道をどこまで信用すればよいのだろう。

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