【連載(6)食べて身になる】ウーバーイーツとわたし 木澤 夏実(げいじゅつ と、ごはん スペースAKEBI)

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お店の苦労編 ~とあるインド料理店でのひとコマ~

モウカッテナイ、タイヘン

 ウーバーイーツ(以下ウーバーと表記)について書こう!と意識し生活してみると、よく見るチェーン店から小さな個人店に至るまで、あらゆる飲食店に「ウーバー始めました」と書かれたステッカーが貼られていることに気が付く。  

先日ひとりでふらりと入った馴染みのインド料理屋の入口にもそれを発見してしまい、なんだか我慢ならず、料理が出来上がるまでの数分間でインド人店主にインタビューを決行した。「ウーバー、もうかってまっか?」と。  結論から言うと「モウカッテナイ、タイヘン」らしい。  

ウーバーのサービスを導入する際に、初期手数料はかからない、ということで気軽に申し込んだのだが、サービス利用時に必須と規定されているタブレット端末の購入費、配達用の料理を盛り付ける密閉容器の仕入れ代、注文が重なって起こる混雑を見越した人員強化にかかる人件費など、後々かかってくる経費は馬鹿にならなかった。ウーバー経由で注文された料理は配達完了後に代金の35%が手数料としてウーバー社に支払われ、その手数料の中から配達員に仕事料が渡る仕組みとなっているため、店側は経費の元を取ることはおろか、ちょっと気を抜けば簡単に赤字を出してしまう。  

もっとも、店側がウーバーを導入した大きな目的はその場での儲けではなく、まだ見ぬ客への「宣伝」なので、ウーバーを通じて料理を注文した客たちが料理の味・内容に満足し、その後実店舗へと食事をしに来てくれることを期待しながら、コツコツと頑張っているという。  

確かにタイヘンですね……と、ちょっとした苦労話を聞き終えたところでわたしの注文した料理が運ばれて来て、それと同時に店主のタブレットから着信音が鳴った。ウーバーを通じてカレーセット5つの注文が入り、5分後に最寄りの配達員が料理を受け取りにくるとの連絡であった。さらに、着信音のすぐ後に店のドアが開き、「9人、いけますか」と団体が入店。ホール、キッチン各1人で営業している店内がとたんに戦場と化し、あぁこれがウーバー旋風か……と、わたしは欲しかったものをお腹いっぱい味わうことができた。

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