【海外から見た日本 その(1)】電車の席に座ると両隣が空く 橘 みく

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Gaijin Seat‐外人シート‐にまつわる話

海外では 有名なスラング

 私は、今回初めて人民新聞に記事を掲載する。「海外から見た日本」というテーマで筆を執りたい。というのは、外国語学部に所属している私は普段から海外に携わる機会が多く、それ故に日本を外側からの視点で見ているからだ。今回は、「Gaijin Seat(ガイジンシート)」という海外で有名なスラングについて紹介したい。 

この「Gaijin Seat」とは、日本で生活する外国人にとってはお馴染みの言葉だ。電車の中で外国人が席に座ると、いつのまにかその両隣が空く―。そんな不思議な現象を表すフレーズだ。  

「ガイジン」は差別用語だが、皮肉にも海外では「Gaijin Seat」という造語が独り歩きしているようだ。ネットで「Gaijin Seat」を検索すると、日本に滞在経験のある外国人がこの現象について語るブログ記事が多数ヒットする。  

この「Gaijin Seat」現象について、実際に外国人はどう思っているのか、聞いてみた。日本に留学中のイラン人男性(21)はこう語る。「僕が電車の席に座ると、いつも両隣の席が空くんだ。混雑していてもだよ。それも一度や二度ではない」。彼は日本に来たばかりの頃、このような現象を何度も経験して不安に思ったそうだ。  

「『もしかすると自分の外見が変に見られていて、避けられているんだろうか?』とか『僕の体が臭いんだろうか。何か悪いことしているのか? 実はこの席に座ってはいけないという暗黙のルールがあって、外国人の自分だけがそれを知らないのでは……?』といろいろ不安に思った」と話す。「けれども、ほかの外国人の友達も同じ経験をしているのに気がつき、安心したんだ。これ以降『日本人は外国人のことを怖いと思っているだけなんじゃない?』と思うようになった」と心の内を明かす。  

このイラン人男性に、「Gaijin Seat」現象が自国で起こるのかについても聞いてみた。彼はこう答えた。「イランでは電車の座席に外国人が座った時、両隣が空くということはまずない。むしろ、外国人の隣に座って話したがる人の方が多いんだ。私たちイラン人にとって外国人はお客さまのような存在だから、積極的に仲良くしたり交流することを望んでいるんだよ」。  

またこの男性に、日本の印象についても尋ねてみた。「日本に来る前は、日本人はみな礼儀正しく、マナーも良く、頑張り屋な人が多いと聞いていた。来日して確かにそう感じた。ただ、外国人に対して日本人がどういった態度を取るのかについては何も聞かされておらず、このような現象が起こることにびっくりしているよ」と彼は答えた。このイラン人男性は、日本の生活で不便なことはほとんどなかったが、唯一快く思わなかったのは「Gaijin Seat」現象であると話している。  

ただ、「Gaijin Seat」現象が起こる理由について、彼は「日本人は外国人のことが嫌いだ」とか「日本人は失礼な人ばかりだ」とは考えていない。日本人が外国人に慣れていないために、外国人のことを「怖い存在」だと感じるのではないか、と分析している。  

アジア系は怖くないらしい

また男性は、留学生の友人らと「Gaijin Seat」についてたびたび議論することがあるそうだ。彼と同じような経験をしたのはイギリスやポーランド、ウクライナといった欧州の留学生や、彼のように中東から来た留学生であった。中国やタイといったアジア系の外国人は入らないようだ。  

日本政府が外国人労働者の受け入れを拡大し、この国は移民社会へと変わりつつある。しかし外国人を「怖い人たち」とみなし、しかもその外国人はアジア系以外に限定されるという感覚を、私たちはこれからも持ち続けて良いのだろうか。形だけのグローバル化は本当のグローバル化ではない。「Gaijin Seat」はそれを教えてくれる。

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