頑張ればなんとかなるとか お花畑な幻想ですね ~その3~小坂 保行(路上雑誌販売員・アマチュア作家)

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金沢の路上生活者のリアル

美術とホームレス排除の コラボレーション

 少し前、排除アートと呼ばれる、美術とホームレス排除のコラボレーションが話題でしたね。今では東京が、五輪に向けて公園からホームレスを排除中とか。金沢のような地方都市でも、同様のものがあったり、計画されたりしました。  

10年ほど前までは、ホームレスの溜まり場といえば金沢駅前広場や駅地下でしたが、北陸新幹線が開通する数年前から、集中的に排除する動きがありました。新幹線で県外からたくさんの旅行客がやってくるのに、玄関口にホームレスがたむろしている光景は見苦しい、ということなんでしょうね。金沢駅から見事に排除されたホームレスは、金沢駅から徒歩5~10分の武蔵ヶ辻というエリアと、道路の向かい側の近江町市場を結ぶ地下道に移動します。  

数年前、民間業者の提案で、地下道壁面に水槽を埋め込み、地下道を無料の水族館に仕立てる計画が持ち上がりました。地元紙にも大きく掲載された当該業者の談話に、はっきりと「ホームレスを地下道から排除することにも役立つ」とあったのですよ。  

こういうことを明言して、賛意をもって報じるあたりは、首都圏や関西のような大都市と地方都市のちがいなんだろうな、と妙に感心したものです。それから数年を経て、いまだに地下道水族館は着工の兆しさえありません。なぜなのかは、わからないのですが。  

宗教関係者も排除に加担

アートだけではなく、宗教関係者による排除もありました。とある教会の入り口横に教会所有のベンチがあるんです。このベンチには、顔見知りのご同業(ホームレス)が座ったり横になったりして過ごす姿をよく見かけました。ところがある日を境に、ご同業がそのベンチで過ごす姿を見かけることがパッタリと止んだんです。ベンチをよく見ると、座面に区切り柵がつけられているんですね。これじゃ座ることはできても、横にはなれない。  

「教会がこんな排除アートみたいなことを?」と目を疑いました。私が抱いていた、宗教関係の人は社会的弱者に対して寛容だろう、という先入観は単なる幻想で、むしろ排除の立場に立つこともある、ということを知ったのです。排除されたご同業の、その後の消息は不明です。  

また、先ほどの人とは別人のご同業が、生活保護を受けられそうになったんですね。あとは住居の確保だ、という段階になり、とある物件(アパート)が見つかりました。仮に入居の承諾も得ました。そして、物件の大家の元へ契約に行ったわけです。  

大家は僧侶でした。ご同業がその物件に入居する経緯を話したところ、突如大家は態度を翻したそうです。契約はご破算。「昨日までホームレスだった人間を入居させるなんてとんでもない」というのが理由だったとのこと。お陰でご同業の生活保護の決定は先延ばしになってしまいました。   

こういう、排除アートもどきや宗教に幻滅させられるような出来事は、地方都市だからまかり通ることなのでしょうか。大都会でこんなことがあれば、ツイッターなどネットでバッシングされるでしょうから。地方ならではの露骨な排除や、生きづらさもあるのではないかと思いました。

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