安倍改憲プログラムの行き詰まり国富 建治(反改憲運動通信編集委員会)

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【連載】運動現場からの安倍政権批判 (1)憲法改悪

 戦争法案の強行採決から4年。安倍政権はその後も数々の強行採決を行い、森友・加計・公文書改ざんなどのスキャンダルも居直り、政権に居座ってきた。政権を倒せない閉塞感が広がっている。一方、4年前から始まった「野党共闘」も一定の成果をあげてきたが、当面の国政選挙は終わった。そこで、政権と対峙してきた社会運動の各分野の方々に、政権の問題と闘いを中間総括してもらい、連載する。初回は、首相の悲願である憲法改悪に東京で反対し続ける国富賢治さんにお願いした。   (編集部)

第一次安倍政権の誕生と破綻

 2006年9月、第三次小泉内閣を継いで第一次安倍内閣が成立した。今では反原発を象徴する小泉元首相だが、首相として初めて靖国神社に参拝している。そして、「8・15首相靖国参拝」を演出したのは、官房長官だった安倍晋三である。  

06年の自民党総裁選で安倍は勝利。産経新聞は「靖国参拝」推進、「女系天皇」反対などで安倍政権を後押しし、「首相就任後に与党内事情や参院選への影響に配慮して発言を封印することは許されない」とクギを刺した。他方「読売新聞」は、憲法問題に触れず、「安倍氏の理念・政策が強い支持を得たとは必ずしも言えない」と突き放していた。実際は、同じ改憲メディアでも「読売」の評価がより現実的だったことが証明された。  

07年1月、通常国会での施政方針演説で安倍は「(現憲法体制が)21世紀の時代の大きな変化についていけなくなっていることは、もはや明らか」と断じ、「新しい国創りに向け、国の姿、かたちを語る憲法の改正」を強調した。それは「改憲手続き法案」成立を目標にしたもので、同法案は同年5月に可決された。しかし事態は異なる展開を見せた。  

相次ぐ閣僚スキャンダルも相まって、07年の参院選で自民党は歴史的大敗を喫し、民主党が第一党に。8月27日、安倍改造内閣が成立したが、不祥事は続き、9月10日の臨時国会開会直後に安倍は政権を放棄。所信表明演説2日後の退陣という異例の事態に。こうして、第一次安倍政権下での改憲方針は無残な結末を迎えた。  

鳩山政権の挫折

後任の福田、麻生の各政権も短命で、09年の総選挙では、民主党が衆院で308議席を獲得する大勝利。鳩山首相下で三党連立政権(民主・社民・国民新党)が成立した。  

政権発足早々、沖縄の辺野古新基地建設が問題となった。「三党合意書」は、民主党の曖昧模糊としたマニフェストに「沖縄県民の負担軽減の観点から」という一句をつけ加えただけの、「辺野古」には言及しない内容となった。  

それは「安保条約と憲法九条の両立」が前提の「東アジアの緊張緩和」という、『世界』誌などに見られる「平和構想」の非現実性を浮き彫りにするもので、連立政権の破綻は、この一点だけでも明らかだった。  

また、「改憲」を掲げた第一次安倍政権の崩壊による「政権交代」は、「改憲」の流れを中断させたわけではなかった。鳩山首相自身が改憲論者であり、民主党は05年に「憲法提言」を発表し、「新憲法」制定に向けた「自由闊達な論議」を強調していたのだ。  

現在、立憲民主党の党首である枝野幸男も、07年の舛添要一自民党新憲法調査会長との対談(毎日新聞)で、改憲国民投票法案への合意形成を強調していた。  

第一次安倍政権の改憲強行路線の破綻が改憲の道を一旦は止めたが、それは民主党政権の政策的枠組みの矛盾を拡大し、機能マヒをもたらしたのである。  

安倍政権の復活と 反改憲運動の正念場

12年の総選挙で294議席を獲得し圧勝した安倍・自民党は、公明党の31議席を加えて、衆議院で3分の2を上回る与党=325議席を獲得。さらに「第三極」を名乗る日本維新の会も、国政初挑戦で54議席を獲得し、民主党に迫る第三党となった。「維新」が改憲国民投票に「賛成」の立場であることは明らかだ。  

政権の座に返り咲いた安倍の改憲攻撃は、13年の特定秘密保護法、15年の戦争法、17年共謀罪法と、連続的かつ計画的なプログラムで推進された。  

注目すべきは、15年戦争法反対運動や、17年共謀罪法反対運動、それと連動する形で積み上げられてきた憲法9条改悪反対運動と、沖縄で展開される辺野古新基地反対運動が自発的に結びあっていることだろう。それは、9条改憲反対の闘いの裾野を日々広げている。  

安倍政権の「総仕上げ」である「9条改憲」=自衛隊を憲法上に明記した改憲のための政治的・イデオロギー的土台整備は、戦争法を軸にした違憲の法体系や、PKOなど自衛隊海外派兵を通じて積み重ねられてきた。  

だから今、朝鮮半島の南北関係の新しい発展による「東アジアの平和」に貢献する「安倍改憲反対」運動が、新しい射程で作り出されるべきだ。  

安倍政権は朝鮮半島の緊張と危機を作り出し、米軍沖縄基地の重要性、自衛隊海外派兵の意義を印象づける。そして、トランプ政権と連携し、朝鮮半島さらにはアラブの産油地の安定までも日本の「平和と安全」の条件だと押し出すことで、9条改憲の「絶対的必要性」を人々に植えつけようとしている。  

こうした世論操作をはね返す、民衆の運動が求められる。9条改憲阻止闘争は、東アジアの民衆連帯をベースに広げていかなければならない。

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