【G7の終焉】「黄色いベスト運動」も合流 須納瀬 淳(パリ第八大学博士課程在学

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G7首脳会議反対集会 バスクで開催

フランス・スペインの連帯運動

 8月24~26日、フランス南西部の都市ビアリッツでは7カ国首脳会合(G7)が開催された。あわせて同都市周辺地域では、社会的不平等や環境破壊を促進する新自由主義的なグローバル資本主義に対抗し「反サミット」の討論会やデモが行われた。ATTACをはじめとした、平等で持続可能な世界を求める「アルテルモンディアリズム」の活動家が多く参加したが、そこに「黄色いベスト運動」の人々が加わったことも話題だった。  

だが、今回の反サミット運動でより重要な意味をもったのは、バスク地方で開催されたことだ。スペインでバスク自治州として自治権を与えられたこの地域は、政府との間で半世紀以上独立を求め武装闘争を展開した「バスク祖国と自由」(ETA)でも知られている。このバスクの活動家たちには、地方自治の観点などからアルテルモンディアリズムに共鳴する人も多く、今回の反サミットも彼らの一部が重要な役割を担った。  

正確には運動の基盤は2つの集合体に分かれており、1つはバスクの運動体を集約する「G7EZ」、もう1つはフランス他地域の運動体をまとめる「アルテルナティヴ・G7」だ。この2つは全ての問題で意見が一致するわけではないが、反サミットという共通意志のもとで協力し合う。  

ここで重要なのは、まずバスクの運動における非暴力主義である。24日、ビアリッツから数キロ離れた都市バイヨンヌでのデモでは警官隊との激しい衝突があり、「L’OBS」紙は38人が拘留されたと報じ、メディアではデモの暴力的なイメージが先行した。しかし、この街では2017年4月、ETAの武装解除を記念して2万人もの人々が街頭に出たのだ。この組織はその翌年に自ら解散を発表したが、1968年から2009年までの間に829人もが死亡した闘争の終幕は、世界中で大きく報じられた。  

世界市民的な 反サミット運動

こうした出来事の記憶も残るなか、バスクの人々を含めた反サミット運動の人々に、非暴力主義の意識がはっきりとあったのだ。その証拠に、同日、フランス―スペイン間の国境に分かれたバスク地域の2つの都市、アンダイエからイルンへと至る9000人規模のデモ行進は無事に行われた。バスクの人々は反サミットの抗議と同時に暴力との決別も表明したのだ。  

もう1つは、地方の自治運動と反新自由主義・資本主義運動との接続だ。先のアンダイエ―ケルン間のデモが象徴するように、今回の反サミット運動では分断されていたフランスとスペインのバスクとがつながった。  

さらに、前述したように、国境を越える世界市民的な発想を持ったアルテルモンディアリズムと、バスク・ナショナリズムとの連結もあった。これ自体は新しいことではないが、反サミットの文脈でこれらが大きな運動体として可視化されたことは画期的ではないだろうか。  

地方の自治運動とグローバルな運動との接続は、例えばフランス西部ノートル=デ=ランドにおける空港開発阻止運動、「ZAD」(=Zone à Défendre 、防衛地帯)にも見られる。単なる抗議活動を越えて、持続可能で平等な社会を地域に根ざした形で作り上げるために、こうした運動の重要性は高まるだろう。

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