【日韓歴認識】日本帝国主義の朝鮮植民地支配搾取と虐殺の歴史に向き合う 編集部・松永 了二

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韓国映画「金子文子と朴烈」をめぐって

隠蔽される中国人・ 朝鮮人大虐殺

 今年2月、映画「金子文子と朴烈」が公開された。韓国で2017年に公開され2百数十万人を動員した。  

この映画は17年、大阪アジアン映画祭でオープニング上映・絶賛され、海外では大きな反響を呼んだが、日本の大手配給会社は上映を拒んだ。19年2月、ようやく小映画館での自主上映が始まったが、大手メディアは無視した。天皇代替わりを前にしてこの映画が韓国で大ヒットしたことに、安倍政権がどれほど嫌悪を抱いたことか。  

時代は大正、1923年9月1日関東大震災に始まる。参謀本部は、治安維持のためと称して朝鮮人アナーキスト、社会主義者の抹殺を策略。「無政府主義者が暴動を企てている」とデマを流した。  

同月16日、大杉栄・伊藤野枝・たまたま居合わせた6歳の甥が連行・殺害された「甘粕事件」が起きる。軍法会議は甘粕正彦憲兵大尉を首謀者と断じて懲役10年を出したが、3年ほどで仮出所している。  

同時に軍・警察・自警団一体となった中国人・朝鮮人虐殺が行われ、6千人余りが犠牲になったことは、曖昧にされたままだ。2017年5月、民進党議員が関東大震災時における朝鮮人虐殺の事実確認を政府に求めたが、安倍政権は資料がないと事実を一切認めなかった。  

朴烈と金子文子は、権力がでっち上げた大正天皇の息子、後の昭和天皇ヒロヒト爆殺の「大逆罪」を敢えて認め、その裁判をとおして、日本の植民地支配と関東大震災における朝鮮人虐殺を糾弾した。  

金子文子は、法廷において徹底的な天皇制批判を展開する。「平等であるべき人間がこんなにも不平等な現実社会を象徴しているのが天皇制である」「天皇は神などではなく私たちと同じ人間にしか過ぎない」―大正時代の大法廷で朗々と天皇制批判を展開する。  

「大逆裁判」において朴烈は、1910年の朝鮮併合からの日本帝国主義の朝鮮民族への差別と搾取、そして朝鮮半島全土で数十万人が決起した1919年の反日帝三・一独立運動に対する弾圧、続いて起こった23年の関東大震災における大虐殺を、徹底糾弾した。  

日本帝国主義の 徴用・売春強要

徴用や売春の強制は、日本帝国主義の朝鮮半島進駐時から行われていたことであり、その表現や日本軍の関与の度合いだけの問題である。  

中国をはじめ東アジアの日本軍占領地域では、同様なことが繰り広げられていた。韓国でよく言われる「心底からの謝罪」とは、それら一連の朝鮮支配、差別、略奪行為、朝鮮分断を招いた責任までも問うものである。朝鮮植民地支配の歴史に対する無自覚が、貿易や軍事協定の亀裂まで生んでいることを、日本人もメディアも認識しなければならない。  

「もう二度と日本に屈服しない」「今なお支配者面をするな」という言葉は、徴用工問題を口にした韓国大使に向かって「極めて無礼」と放言した河野太郎だけに向けられたものではない。朴烈や金子文子が80年前に語った「本来、人間にも国家間にも上下はない」。―韓国人民は、今私たちに問うている。

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