【参院選とネディア】自民「敗北」をスルーした 御用メディアの犯罪 浅野 健一(元・同志社大学大学院教授)

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海外メディアが注目した「れいわ新選組」

 韓国のMBCテレビの「MBCスペシャル」のプロデューサーとカメラパーソンが、7月18日から22日まで、参院選挙の特別番組を制作するため来日した。  

取材班が関心を持ったのは、韓国への半導体材料の輸出規制を強行した安倍晋三政権の与党が改憲発議に必要な議席「3分の2」を取れるかどうかだった。山本太郎・前参院議員が立ち上げた「れいわ新選組」(以下、「れいわ」)にも注目した。  

MBCクルーがまず取材したのは、18日夜の水戸駅前での山本氏の演説会だった。「消費税を廃止し、富裕層の所得税を増税する」「返済不能の大学奨学金をチャラにする」「介護、保育の仕事を公務員にする」。斬新なアイデアだが、「お金を刷って経済を伸ばす」「外国人労働者が増えると日本人の賃金が下がる」と強調した。党名に元号を入れたことも含め、経済成長至上主義、日本ファーストの姿勢が気になった。MBCプロデューサーのキム・インス氏は「山本氏の演説は文在寅大統領の演説にそっくりで、社会主義的だ」と語った。  

19日の東京・新橋の「れいわ」演説会では、東京選挙区の野原ヨシマサ候補(創価学会沖縄壮年部)ら候補10人が勢揃いした。野原氏は同じ選挙区の公明党、山口那津男委員長を念頭に、「安保法、共謀罪に賛成した公明党をつぶそう。公明党を支える創価学会執行部を退陣させよう」と訴えた。  

蓮池透候補は「近くに本社のある東京電力で働いていた。福島事故の復旧もできていないのに、何が復興だ。原発は禁止だ。安倍首相は、拉致問題を政治利用して権力を握り、拉致被害者を救う会のブルーリボンバッジを付けているが、何もしていない」などと語った。  

船後靖彦、木村英子両候補は介護者がメッセージを代読。聴衆の最前列には障がい者ゾーンが設けられた。安富歩東京大学教授は「子どものことを考える政治」を訴えた。  

選挙運動最終日の20日は、秋葉原駅の自民党演説会を取材した。制服、私服の警察官があちこちに立っていた。公道に非常線を張り、党の街宣車の周辺には入れない。制服警官が「黄色いシールのない人は中に入れない」と言う。「ここは公道ではないか」。「取材なら取材エリアが設けられている」。「自民党・警視庁と記者クラブが取り決めたのだろうが、フリージャーナリストは関係ない」。「とにかく、ここから出てもらいたい」。「法的根拠は何か」。「トラブルを防ぐためだ」。警官は「一般の人がいるから、勝手に写真を撮影するな」とまで言い、「公務執行妨害になるぞ」と威嚇してきた。  

私はインドネシアのスハルト軍事政権下の選挙を取材したが、警察(軍の一部)が選挙集会にこれほど露骨には関与しなかった。選挙の自由は日本国憲法で最も保証されるべき基本的人権で、行政機構の警察が特定政党に肩入れするのは違法だ。  

9日には香川県高松市で安倍氏の応援演説を取材したが、ここでも警視庁を含む警察官が大量動員されていた。15日、札幌では安倍氏に野次を飛ばした男女が警察官に強制的に移動させられ、18日には大津市で「アベ辞めろ」と叫んだ男性が警官に最後列部に連れて行かれた。  

安倍政権は一線を超えた。公安警察が自民党の警備をしているのだ。官邸を牛耳るのは日本会議・靖国反動派と杉田和博・元神奈川県警本部長、北村滋・元兵庫県警本部長らの公安警察官僚だ。  

電通をフル活用した自民党CM テレビ・新聞から政権批判を一掃

自民党は電通をフル稼働してCMを繰り返し、投票日当日の読売新聞に大広告を載せるなどしたが、9議席も減らし単独過半数を獲得できず、維新込みでも改憲派は「3分の2」に達しなかった。  

ところが、安倍氏は「勝利宣言」し、「改憲の議論をすべきではないかという国民の審判だった。残された任期の中で挑んでいきたい」と発言。22日の会見では、改憲派のいる国民民主党を名指しして、憲法審査会での合意形成を呼び掛けた。  

参院選の投票率は戦後ワースト2の48・8%。日本の議会制民主主義は崩壊した。  

テレビ各局が安倍晋三記念小学校・加計獣医学部の両疑獄事件、辺野古新基地建設強行、米国からの戦闘機などの爆買いなど悪政についてあまり報道しなかった。芸能ネタの報道に終始して、参院選の報道が極端に少なかった。  

消費税の10%の引き上げが報道されなかったのは、「食品と新聞に軽減税率」があるからだ。民放局の多くは新聞各社が所有し、テレビも「新聞に軽減税率」を伝えなかった。雑誌、書籍も来年半ばに軽減税率の対象にするという財務省との密約があり、週刊誌もほとんど取り上げない。  

4月以降の新元号、天皇交代、トランプ米大統領訪日、大阪G20サミットなどで、「安定政権」「外交の安倍」の虚像を宣伝したキシャメディアの罪は深い。  

参院選後、テレビ朝日は「モーニングショー」に山本氏を出演させ、フジテレビも山本氏に語らせた後、小倉智昭氏が「参院選の最中に来てもらうべきだった」と話した。田崎史郎氏らは「自民票をとれておらず、限界がある」と言っているが、次の衆院選が面白くなった。  

私が代表を務める人権と報道・連絡会は企業メディアが権力の一翼を担っていると見ている。キシャクラブ制度の全廃などメディア革命なしに、この国のデモクラシー(人民統治)の前進はない。

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