支援者による暴言・無理難題も フリーライター 谷町 邦子

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多様性を尊重する政治を阻む 選挙運動・政治活動中のハラスメント

被害を経験する 女性や少数派

 女性と人権全国ネットワークによる「選挙運動・政治活動ハラスメント」実態アンケートの調査結果の概要が発表された。調査より、選挙に関わる運動の中で、有権者・支援者・立候補者らによるセクシャルハラスメント・パワーハラスメント(以下、セクハラ・パワハラ)の実態が明らかになった。  

調査は2015年1月1日から2019年4月30日まで、インターネットにより実施(回答者146名)。回答者のうち立候補者・立候補予定者の69・2%、組織内支援者の53・7%、個人支援者の47・9%が、選挙運動・政治活動においてハラスメントを経験したと回答。  

経験したハラスメントは、男女ともパワハラが多数だった。また、有権者や支援者からのハラスメントが全ての属性で多く、女性や少数派属性の人が被害に遭いやすい傾向が現れていた(グラフ参照)。  

横行するハラスメントに対して、ほとんどの回答者が「選挙運動・政治活動ハラスメントの防止のために何かしらの防止策が必要」と考え、性別問わず法律等による禁止規定と罰則を求めているという。また、有権者教育や社会啓発を求める声もあがっている。  

自由記述では、ハラスメント被害の具体的な状況が多数寄せられた。例をあげると、「(略)女性は主に電話かけや事務所の雑用が中心、うぐいすの時もショートパンツをはかされ恥ずかしい思いをしました」と、女性の性役割や性的なアイコンとして利用する形での支援者から支援者へのセクハラや、「男性立候補者の選挙運動時、選挙カーで廻っている際、車の中で必要以上に女性の体を触る方を目撃」したという候補者から支援者へのセクハラ。また、「選挙応援での集まりで中高年男性にセクハラを受けたが、有権者なので議員さんも注意せず見ないふり」という声もあり、選挙という状況でのセクハラ抑止の難しさを感じさせる記述もあった。  

また、パワハラでは、「男性支援者は、自分の思い通りにならないと罵声をぶつける。言うことを聞くと急に優しくなる(略)」「『政治家のクセに』から始まるハラスメントが多いと思います。相談でもなんでもない飲み会へ来いや、無理難題をやれと言われる(自分だけ特別扱いしろなど)」など支援者という立場を利用したもの、「年齢が低いほど被害に遭いやすい。期間中のイライラをぶつけまくるのは高齢の方のほうが多い」という、若年の人をターゲットとしたものについての記述もあった。  

運動におけるハラスメントの指摘の難しさ

調査結果をもとに、女性と人権全国ネットワークは「多様な人々の政治参画を実現するためには、こうした状況を改善してゆく必要がある」と主張する。だが、ハラスメントに気づけず、反省できない人に、多様性を尊重する社会づくりは期待できるだろうか。法律による罰則を待たず、運動内部の意識向上による防止が望まれる。

※少数派属性…アンケートで「性的指向(性愛の対象が異性か同性かなど)、障がいの有無、生まれついた性別に耐え難い違和感をもつかどうか、民族的出自などの事柄によって、不利な立場におかれる人々がいます。あなたご自身は、上記の4つの事柄について不利なほうの属性が1つ以上あてはまりますか、それともあてはまりませんか」という質問に「はい」と答えた人。

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