家族農業を破壊する安倍農政 山形「おきたま興農舎」代表 小林亮さんに聞く

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借金負った大規模農業が破綻の危機に

 おきたま興農舎は、水俣病などの環境汚染や食の安全にへの危機感を背景に、農薬・化学肥料の大量投与や資本の収奪に対峙する農民グループとして1989年に発足。「土を大切にした農法でたくましく育った農産物は美味い」という信念のもと、有機農業・産直運動をリードしてきた。安倍=自民党農政について代表の小林さんは、「農家・地域の主体性と共同性を奪っている」と批判する。 (文責・山田)

 日本の国土・自然環境は、農林水産業に携わる家族・住民の無償労働によって維持されてきました。この農家の役割を遅まきながら認め、理念として盛り込んだ戸別所得補償制度が民主党政権時(2011年実施)に作られました。  

しかしその後、政権に復帰した自民党は、同制度を「経営所得安定対策制度」と改称し交付金を半減、安倍政権では全額カットしました。農地を集約化し、規模拡大を促すという方針からです。  

日本の農業を支えてきた家族農業を切り捨てて大規模農家を育てる、という政策が破綻しつつあることは明白です。所得補償のカットは、小規模農家を離農させるだけでなく、大規模農家にとっても米価の低下が続いて生産費を下回っている現状においては、規模を拡大するほど大きな赤字を抱えるからです。  

大規模農家が設備投資で大きな借金を抱え、米価の低下で倒産する。その農地と生産設備を企業が買収する―、安倍政権はそうした未来を見越しているのかもしれません。  

2018年12月、国連総会で「小農と農村で働く人びとの権利宣言」が採択されました。「家族農業こそが地球環境を守る」という理念に基づいた「小農の権利宣言」は、国連加盟国に「小農を評価し、その生活水準を保つことやそのための財源確保や投資を促す」という画期的な内容です。残念ながら日本は、棄権に回った国のひとつです。  

小農は、地域社会に根ざして地域の景観と農業生態系を守っています。こうした役割に対して出されている中山間地への補助金は、地域集落単位の共同作業に対する補助金ですが、自民党政権下では、補助対象作業を項目化し、いくつかのメニューから選択させるという方式に変えました。かつては、地域の自然環境・集落の事情に応じて相談・工夫しながら行ってきた共同作業を、効率の名のもとにシステム化することで、「補助メニューからの選択」にして、農家・地域の主体性と共同性を奪っています。  

安倍政権が進めるTPPに代表されるような飽くなき自由貿易推進―効率を重視し、「生産力の低い」農林漁業のような産業は撤退させる―という路線は、世界の潮流に逆行しています。  

かつての自民と異質な安倍政権 民主主義の劣化と小手先の政策

安倍政権は「批判にさらされると目先を変える」という姑息な統治手法を多用していますが、農政も朝令暮改が当たり前になっています。官僚は官邸への忠誠度で競争し、議論もなく「新しい」政策をひねり出すからです。  

農産物輸出への補助金もそのひとつです。日本の農産物が海外で評価され、輸出が増加していると言われていますが、農家の出荷単価は変わっていません。莫大な補助金は、運送費や中間業者に支払われているのです。  

今年3月に山梨で行われた「〝日本の食品〟輸出EXPO」には6000万円の補助金が使われましたが、総契約額は3000万円だそうです。補助金ありきの輸出であり、農家の収入も増加しません。  

近年、損得でしか判断できなくなった人であふれています。自分を守るのに精一杯で、他者に目が行かないのです。これは、人が土から離れて生活をするようになった結果だと思います。土は、微生物や小動物、病菌や雑草など、多彩な生物が共存している世界です。他者と向き合い・葛藤に身もだえしつつ、共存することで、人間社会は成長するのではないでしょうか。  

かつての自民党とは全く異質の政治勢力が自民党を牛耳り、安倍政権として日本を統治しています。その方向性は、「自立して考えることをやめさせる」ことで一貫しています。民主主義の基盤は、考える、議論する、他者を尊重することです。この基盤が劣化しています。小手先で政策を変えてもどうにもなりません。  

「会社に雇われて消費する人びと」ではなく、「自営して暮らしの糧をつくり出す人々」が中心となる社会こそがまっとうな社会です。そのためにもまずは、小さな闘いの訓練が大事だと考えています。

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