【G20 10年間の変節】世界経済を支配する 米中二大国時代 編集部 松永 了二

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史上空前の警備体制と4千億円のムダ使い

G20は、2008年のリーマンショック後の世界金融危機に対処するために、米国、英国、フランス、ドイツ、日本、カナダ、イタリア、ロシアで形成していたG8に代わる国際的枠組みとして作られたものだ。しかし内実は、自ら作り出した金融バブル崩壊のツケを、中国をはじめ有力新興国へ分散することを目論んだものだった。  

結果は、この10年足らずの間に新興国はもとより、世界の最貧困国までもグローバル化の渦の中に引き込み、多国籍企業の餌食とした。戒厳令の予備演習のような過剰警備と、4000億円とも言われる接待費が浪費される空疎なセレモニーが続くなか、トランプは次期大統領選挙に向け「自国優位のルール作り」に固執した。  

G20大阪会議の総括と、各地の抗議行動を紹介する。

 1970年代オイルショック時のG5から、今日のG20に至る会議における彼らの地球的支配は、世界中の人々から強い非難を浴びてきた。  

しかし、今回のG20はこれまでの会議とは少し様相が違った。米国を中心にした先進国といわれる諸国に代わって、中国の圧倒的な影響力と、それに対抗するトランプのあからさまな「自国第一主義」の振る舞いがあった。グローバル資本主義の牽引役であった米国が、今や自由主義の世界ルールを破る保護主義の張本人と化し、世界中を翻弄している。  

GDPはもとより、米国が最も重要視するIT、AI、デジタル分野でもまもなく中国は世界トップとなると予測されている。むろん経済力では、華僑資本も含めれば米国を抜いているとも言われる。中国企業、金融、そしてテクノロジーのグローバル化は、すでに米国をしのぐものがある。  

トランプに忖度 空疎な声明文

G20財務省・中央銀行総裁会議では当然、世界経済を混迷させている「米中貿易戦争」を懸念する声が各国から上がったが、トランプ大統領の暗黙の圧力により、共同声明の「保護主義に対抗する」という文言は前回に引き続き削除された。  

地球温暖化対策においても、米国のパリ協定離脱を公然と非難することなく声明はまとめられた。海洋廃棄プラスチック問題も、中国や東南アジア諸国から廃プラ輸入を拒否されて日本国内にあふれかえる深刻な状況にはフタをし、その解決を2050年まで先送りした。  

「米中貿易戦争」第4弾の米国の関税引き上げが現実のものとなれば、米中のみならず世界中の人々に大きな影響を与え、「戦争」という言葉が大げさではなくなっていたであろう。トランプにとっても大統領選挙を来年に控え、米国経済、とりわけ農業分野での悪影響は大きな痛手になる。  

G20首脳会議そっちのけで 人々の注目を集めた米中会談

計算高いトランプは、関税25%引き上げというカードを懐に中国を脅し、トランプ自身の世界における存在感を高める道具として使った。会談の結果は、米国側が中国への追加関税を見送り、通商協議を再開するという穏便なものだった。  

そして、想定外の大きな妥協があった。知的財産権、軍事機密流出に強くこだわり続けたトランプが、米国企業のデジタル関連機器のファーウェイへの輸出制限措置を解くという「寛大さ」である。これに対して中国側は、米国産農産物の輸入拡大を改めて受け入れることにとどまった。  

畜産飼料不足に悩む中国にとって、それは補助金を出してでも手に入れたかったもので、とても米国側の譲歩に見合うものではない。トランプの妥協の裏にはIT、デジタル関連における中国側の何らかの譲歩が隠されている。  

金正恩と板門店での面会

おまけは「金正恩との板門店での面会」という、米大統領選に向けたトランプの提案であった。このパフォーマンスのお膳立てをしたのは、米国の大幅譲歩を得た中国であろう。  

今後の米朝会談がどうなるか予測はできないが、米国メディアはG20より大きな扱いでトップニュースとして報じた。一時的にせよトランプが大きな得点を挙げたのは確かだ。また極東アジアにおける日本、安倍の存在感のなさを世界に示す結果となった。  

時代錯誤のG20

このように今回のG20首脳会議は、開催前から「何の意味がある会議か」と揶揄されてきたとはいえ、これまで以上にトランプを忖度した内容となった。  

グローバルな市場経済の複雑な利害関係を、このような国際会議でコントロールしようとすることがすでに時代錯誤であることを、世界の目にさらす結果となった。

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