淡い期待にすがるのではなく 現実を直視し、根源を変える真の改革を 編集部 山田 洋一

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統一地方選 前半戦 大阪 維新大勝

統一地方選前半戦が終わった。大阪では、維新が大勝。全国的にも自民党が得票を伸ばし、リベラル勢力には厳しい結果となっている。3月の編集部・論説委員会は、『維新』をテーマに行った。選挙結果を踏まえて報告する。

 大阪府知事・市長ダブル選は維新が完勝、府議会でも単独過半数を獲得し、維新大勝といえる結果となった。結党から9年、大阪における維新支持の底堅さが証明された。  「反維新候補」がいずれも自民党で、政策の新味もなく、「生まれて初めて自民党に投票するのか」と嘆く人も多く、反維新の民意をすくいあげることができなかった。  

しかし、投票率(府知事選=49・49%、市長選=52・70%)は、前回比2~4ポイント上昇していることを見れば、与党=維新政治の「実績」?が一定評価された結果と言わざるを得ない。  

それは、都構想の是非よりも、万博誘致をはじめ再開発事業による景気上昇感があり、「維新政治で、景気が良くなるのではないか?」という期待感が、大阪の若年層・無党派層の間では広がっているからだ。加えて維新は、子育て支援として「教育無償化制度の拡充」、「教育の無償化」、「塾代クーポン制度」などをうちだし、子育て世代の支持も取り付けてきた。今回の選挙では、18才までの「子ども医療費無償化」も訴えた。

自民党政治への 先祖がえり

ただし、維新政治の実像は、明らかになりつつある。有効求人倍率の上昇、完全失業率の低下、来阪外国人の増加とそれに伴う開業率の上昇、廃業率の低下などの「改善」は、日本全体の傾向であり、求人の多くは非正規労働が占めているために、見せかけの改善でしかない。  

維新は、万博誘致「成功」に小躍りして喜んだが、土地の埋め立て、夢洲までの大阪メトロ延伸、夢洲大橋の拡張、上下水道の整備など、土地造成やインフラにかかる総事業費は950億円。さらに、万博会場の建設に1250億円(国、経済界、大阪府・市が負担)、舞洲駅直結のタワービルの1000億円以上かけた建設も構想されている。  

「既得権益の打破」を訴えて登場してきた維新は、与党として箱物公共事業で権益をばらまき、景気拡大をはかるという自民党と同じ経済政策に先祖返りしているのが実態だ。税金投入と外国人観光客によって当面の景気は維持できるだろうが、五輪・万博後の落ち込みを避ける手だてがあるとは思えない。膨大な箱物と負債を抱えて四苦八苦する大阪が見えるのは、私だけではないだろう。

地域で富が循環 し、中小企業を 核とする大阪を

長い不況の末に非正規労働が多いとはいえ職を得て、最賃労働から抜け出て、ホット一息ついている若年・中年貧困層が、手垢の付いた自民党候補者に投票などできないという心情は当然である。できればこのまま景気が順調に回復し、中流階層の仲間入りができるのではないかという淡い期待を組織しているのが維新である。  

しかし、巨大開発を起爆剤にして経済成長を達成するという時代は過ぎ去った。東京へのコンプレックスと「夢をもう一度」という願いは、現実によって打ち砕かれる。外貨・カジノ頼りの歪な経済構造ではなく、地域で富が循環し、中小企業を核とする大阪の特徴を生かした「もう一つの大阪」こそ目指すべき大阪の未来像である。

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