【編集一言】

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 「天皇は靖国神社を潰そうとしている」―この発言が問題視され、昨年10月末に引責辞任を余儀なくされた小堀邦夫前宮司。11月末、彼は暴露本ともいえる「靖國神社宮司、退任始末」を発表した。

 靖国神社の利権をめぐり安倍政権の意のままに操れる宮司にすげ替えようとする神社本庁側と、自分たちの旧特権を守りたい皇族側の闘いが描かれている。小堀は神社本庁側に選任された人物だ。

 靖国神社は単立法人で、神社界の総元締めである神社本庁の傘下にはない。そのため、国の意向や神社界の意向をくむことなく、独自で方針を決定できる。そこで大きな力を持つのが靖国神社のトップ職「宮司」だ。宮司を抑えれば靖国神社が意のままになる。

 神社本庁の狙いは国家神道の復権にある。そのために全国の戦没者を祀っている靖国神社が欲しい。小堀も、(1)靖国神社は神社本庁の傘下に入るべき、(2)第二次世界大戦以降の戦没者を丁重に扱い、存在感を与えるべき、としている。

 安倍政権が戦争へと突き進む中で、戦前回帰を目論む「日本会議」が登場した。神社本庁はその中核に位置する。8年目を迎え、支配体制を強固にする田中神社本庁総長は、2016年の初詣の時期に各神社に「憲法改正1000万人署名」の一貫として署名ブースを設けさせるなどし、安倍政権を支えてきた。

 この強権的な体制に対し、本庁内部でも「反田中派」が結成され、役員会での追及は激化し、「今日限りで退任する」と発言したが、臨時役員会で撤回する騒動にまで発展した。総長を指名する立場の鷹司統理(皇族出身)は苦言を呈したが、田中は意地でも辞めないばかりか、安倍政権を後ろ盾に、自身のさらなる長期政権化をも視野に入れている。小堀の後任に、より近しい人物を据え、田中―安倍の影響力は増すばかりだ。(編集部 村上)

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