【視点 論点】「移民キャラバン」

ホンジュラスの政変・荒廃が生んだ

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 トランプは、ホンジュラスから米国を目指して移動する数千人のキャラバンを全力で阻止すると警告、メキシコ政府にも「難民申請を受け付けるな」と圧力をかけている。

 「私たちは移民しているのではない。酷い状態から逃げているだけだ」と、エル・プログレン市からキャラバンに加わったティモシーさんは語った。もう一人のフェルナンドさんは上着を脱いで、10回も強盗に腹を刺された傷跡を見せて、「犯罪、悪政、貧困から逃れているのだ」と語った。「もう我慢の限界だ。いくら努力しても国は良くならない。北へ逃れるしか道はないのです」。

 ホンジュラスでは、2006年に民主主義選挙で選ばれた中道左派のマヌエル・セラヤ大統領政権が、2009年に米国の画策した右翼クーデターで倒れた。それ以降、右翼国民党の支配となり、政変と混乱続きで、国内が荒廃した。

 2017年にやっと選挙が行われ、米国の後押しで親米派フアン・オルランド・エルナンデスが大統領になったが、明らかに不正選挙であった。詐欺やペテンだらけの不正選挙に民衆の抗議が数カ月続いたが、押し切られ、民衆は未来への希望を失くした。

 「ストライキやデモなど、さまざまな形で抗議したけど、厳しい弾圧を受けただけだった」と「移民」の一人が語った。「ホンジュラスでは、貧しい人間は飢えるだけで、仕事もない。私たちは働き口を求めているだけだ」。

米国が画策した右翼クーデターが政治の混乱と貧困の原因

 ホンジュラスの人口は920万人で、貧困ライン以下の生活者は600万人を超えている。2017年中に貧困層がさらに6%増え、貧困ライン以下の生活者の数が40万人増加した。そういう状況の中から「仕事探しキャラバン」が生まれたのである。

 ホンジュラス政府は、「キャラバンは野党や左翼の演出だ」と決めつけ、「参加者はカネをもらって参加している」というとんでもないデマを流している。

 現在、経過地であるグアテマラとメキシコの国境で足止めされ、国境付近が難民キャンプのようになって、衛生状態が悪く、病人も出ているという。中には川を泳いで渡ってメキシコへ入ろうとする者もいるが、メキシコ警備隊は催涙ガスと棍棒で対応している。

 米国評論家の中にはキャラバンを不法入国とか侵略という言葉で非難する者もいるが、故郷の家族に仕送りできる仕事を探して米国へ向かって移動しているだけの人々なのだ。かりに米国に辿り着けたとしても、差別や逮捕や強制送還が待ち受けている。

 それでも、万が一のチャンスを求めて移動する越境者たちに慈悲の心を持つべきだ。なぜなら、その原因を作ったのは米国だからだ。それを米国の政治家や評論家たちは考えるべきだろう。(編集部・脇浜)

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