【視点論点】ギリシャ、債務危機 未来世代へのツケ回し

たらい回しの借金 いつかは破綻 編集部 脇浜義明

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 緊縮財政の成果でギリシャが債務危機から立ち直ったというような記事を読んで、びっくり。そんなはずはないと思って調べると、やはりそんなはずはなかった。要するに、甲からの借金を乙からの借金に切り替えただけで、甲からの借金が少なくなったというだけのことで、借金そのものは減るどころか、増えている。簡単に経緯を述べる。

 第一次救済(2010)は欧州の民間銀行からの借金。その借金危機を乗り切るために、第二次救済(2012~15)が行われた。つまりトロイカ(欧州委員会、欧州中央銀行、IMF)が民間銀行の債権を買い取ったので、ギリシャの救済というより、主としてドイツの民間銀行の救済であった。

 第三次救済(2015~18)は、トロイカへの借金を、再び民間部門(銀行、債権投機筋、ヘッジファンド、ハイエナ的金融屋)からの借り入れで支払った。その借入元金の移転がある程度完了したのを「ギリシャの立ち直り」と誤魔化しただけのことで、借金地獄はそのまま継続している。

 借金には利子がつきものだ。緊縮財政で民衆、とりわけ労働者、小規模商店主、年金生活者、失業者、貧困者から吸い上げたカネで利子を支払ったのである。失業率は20%近く、賃金は下落 し、 熟練労働者の場合35%、未熟練労働者の場合31%下落したまま。

 最低賃金額は22%下落。年金受給資格年齢は10年引き上げられたまま。そして労働者と小商い者への増税。それがトロイカへ回ったので、それをシリザ政権と西側メディアは「立ち直り」と呼んでいるのだ。日本も同じ構造だ。

 日本の安倍政権は「緊縮財政をしない」という記事をどこかで読んだ記憶があるが、社会福祉切り捨て、生活保護減額、年金額減額、社会保険料増額、そして未来世代へのツケ回しをしている点で、ギリシャと同じである。貧者から吸い上げたカネで米軍需産業へ回している点でも、ギリシャ民衆のカネがEU資本家へ流れていっているのと同じ構造である。

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