ぷりずむ

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 知人に勧められた真木悠介の著作集でドーキンスの「利己的な遺伝子」を知った。「個体の形質も行動資質も、遺伝子の再生産を確実化し効率化するように形成されている」という結論は味も素っ気もない。が、生物個体の生存形態や繁殖という観点では理解できない資質や行動をよく説明している。また動物のエゴイスティックな子殺しと群れのために命を懸ける献身的行為など、個体レベルで考えれば利己的・逆に利他的にみえる現象も、「遺伝子の利己性」という同じメカニズムで捉えられる▼そこでは、「動物(人間)は利己的か利他的か?」という問題設定が解体され、他の個体(他者)との共生や共存の原理的な可能性が示されてもくる。筆者は、進化史上の最たる成功に昆虫と顕花植物の「共進化」を挙げている。花の香りにハチが誘われることにより双方の生存や繁殖の機会が増大する関係性だ▼翻って人間社会の現状を考える。気候が良くても窓を開けたり洗濯物を外に干すのが躊躇われる空気、そのままでは飲めない水、まともに作物が育たなくなった土…。これらを引き起こした活動根拠は何か? 利己的でもなければまして利他的でもない。本当に愚かしい、「緩慢な自殺行為」が進行している。(竜生)

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