【文化欄】アイリッシュパブ GNOME (ノーム)

~政治を語れる場をつくる~

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 <政治を語れる場をつくる>という強い思いを感じるインタビューだった。

 京都の中心部にある「アイリッシュパブ GNOME(ノーム)」は、安全性や手作りにこだわったアイルランド料理の店である。アイリッシュパブといえば京都にもいくつかあるが、ここまでメニューが豊富でこだわった店もないだろう。メニューには「初めてだけど、どこか懐かしいアイルランド料理」と書いてある。人気商品のフィッシュ&チップスは衣にギネスビールを使っていて、その辺が懐かしさのゆえんだろうか、などと発酵食品にはまっているぼくは思いを巡らせる。ちょっとはまってしまいそうである。

 週2~3回くらいのペースでアイリッシュ音楽のライヴもしているGNOMEだが、美大出身のオーナー白坂さんは学生時代はロックバンドと絵ばかりを描いていたという。現在はアクセサリー、雑貨品の会社の代表者でもあるが、アイリッシュ音楽をしていたわけではないそうだ。

 なぜアイリッシュパブにしたのかといえば、アイルランドの田舎ではパブが地域のコミュニティの場として大きな役割を担っているからだという。またアイリッシュパブは労働者階級の集うところであり、軍歌や反戦歌が唄われ、アイルランドの抵抗の歴史とともに歩んできた場所ともいえる。そのような「音楽を中心にしたコミュニティ」を作りたかったそうである。

 高校生の時から社会運動には関わってきたという。行動力や分析のことばにその蓄積を感じさせる。インタビューは最近主体的に動いている知事選、40代の責任や左翼運動の反省点にまで話は及んだ。GNOMEでは講演会もやっていて参議院議員の山本太郎、ジャーナリストの志葉玲、精神科医の香山リカさんらの講演会が行われたり、森友問題がまだ出る前に幼稚園の教育現場の映像を流した講演会も開催し、「旬を先取りしていた」と振り返る。

 また「ノームサロン」という自主勉強会も月1回のペースで催している。このような講演会や勉強会も2015年の安保法制がきっかけになったそうである。いままでも個人でデモなどに参加してはいたが、「このまま流されてはヤバい、みんなで何かをする活動をしなくては」と、始めたそうである。とにかく垣根を低くしたい。政治への無関心に手をのばす、井戸端会議の延長で生活の話題から政治へ拡げていく活動でありたいと語る。そのような姿勢が物語るのか、参加者の9割が女性であるという。

音楽と政治がひとつの空間に共存していることの作用というか、意味があるとするならば?

 「差別や階級のない世界。すべての社会的な問題はそこにつながっている。言葉の違いもない。音楽や芸術っていうのはそのような分断がなく一緒に裸になって感じれるところ。そういう場所ができたらいい。

 社会運動も会社も人間関係も、真黒に塗ったキャンバスに一滴ずつ白い絵の具を垂らしているようなもの。見た目は変わらないけど、正確に成分を調べたら絶対に違っている。そう思わなやってられへんというか、そういうものだと思ってやっている。」
 いずれ真っ白になりますか?という質問に「うん」、とうなずく白坂さん。言葉や意味ばかりのインタビューに最後、鮮やかな白がよく染みこんだ。
(編集部 矢板)

ACCESS住所 京都市中京区一之船入町375 (河原町二条下ル)地下Tel 075-200-6855  

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