【提言連載開始】最悪の時代は、最良のチャンスだ

【米国から】社会運動は今こそ革命の可能性を語ろう

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Zコミュニケーション・デイリー・コメンタリー マイケル・アルバート(米国人文筆家、活動家)

国会初日に首相が「改憲を実現する時」と宣言。政権の力は強く、戦争法や共謀罪同様、今のままでは押し切られる危険性も高い。だが戦争と安倍政治に不安を感じている人々は多いはずだ。どうつながるか。

 そこで米国の活動家の提言を紹介する。トランプ政治も「最悪の時」だが、それは人々が資本主義を批判し、新たな社会建設へ行動する「最良のチャンス」でもあり、社会主義にも関心が高まっていると著者は言う。あとは活動家や知識層が恐れずに変革の必要を提言することだと。本紙も改憲阻止と変革のためにインタビューや提言の連載を始める。その導入としたい。(編集部)

 民衆は変革を求めている。米国社会ではトランプや反動的潮流のことばかりが強調されているが、民衆の間で「資本主義」批判と「社会主義」への好感が公然と語られるようになってきたことについては、進歩的メディアも活動家も知識者もあまり注目しない。

 民衆が反動化、差別、搾取激化、核戦争脅威、地球温暖化のために悲観的・無気力になっているわけではないのだ。例えば私は次のようなアンケートを試みたが、一般の人々からより良い方の答えが返ってきた。

 アンケートの内容

●2千万人の朝鮮人の皆殺しか、交渉による解決か、どちらを選びますか?
●地球温暖化や異常気象をもたらす化石燃料発電か、太陽発電や風力発電か、どちらを選びますか?
●一般民衆から金持ちや大企業への所得移転となる税制か、後者を規制して一般民衆、特に貧しい人々へ所得移転する政策か、どちらを選びますか?
●人種差別、同性愛差別、女性差別を仕方がないと思いますか、それとも多様性と人権を尊重する政策を望みますか?

 現在は最悪の時である。同時に最良の機会でもある。政治家や企業が階級的敵意をむき出しで狂気へ走っているが、同時に大衆が急進的で革命的な思想に心を開くようになっているからだ。抵抗が革命へと変わる気配があるからだ。

 進歩的メディアやそこにモノを書く人々が、なぜそれに注目しないのか。なぜトランプらの否定的面ばかりを取り上げて絶望的未来を説き、実り豊かな未来の可能性を語らないのか。鬱と不安に取りつかれているのか、無神経で怠惰なのか。

 私のアンケートに人間らしく答えた人々は、そんな社会的病気にかかっていない。無神経や怠惰が原因とは思わないが、進歩的知識人に一種の鬱、悲観主義、敗北主義を少し感じる。

 それが多様な運動、革命的世直し運動の形成を妨害しているように感じる。「アンチ(反対)」に留まり、それを越えて民衆解放ビジョンという包括的運動を志向する「プロ(賛成)」に行かないのだ。

民衆の問いに応えお互いに支え合う

 なぜ、例えわずかでもかつての民衆の権利を取り戻し、まだ勝ち取っていない新しい解放を目指そうと語る人が増えないのだ。「そういうユートピア社会作り運動は、徒労に終わるだけで、積極的な参加の対象にならない。せいぜい我々にできるのは、狂気の支配を回避する闘いだけだ」という水準以上には出ないのだ。

 なぜ社会の個別的な課題で資本が我々に与えた損失を相殺するか、少しでも不正を減らす闘いという水準以上から出ないのだ。

 なぜ積極的な民衆を解放する目標を掲げ、多様な人々の要求や課題を共有し、多様な人々を結びつけ相互支援する包括的運動に向かわないのだろう。

 トランプや資本の露骨なやり方に対し勇敢に闘っているのに、民衆の人間的要求を取り上げ、民衆の潜在的可能性を解放させる、何か新しい社会機構を、民衆とともに考え、創り出す運動にあまり関心を寄せないのは、いったいなぜだろう。

 ビジョンを作るために、陰口や足の引っ張り合いを止め、お互いに支え合うのだ。活動家が働きかける民衆は、「うん、君が反対するのはよく分かる」「で、それに代わる望ましいものは何か?」「それを実現するにはどうすればよいのか?」と問うている。その問いに答えるべきだろう。

ユートピア運動への冷笑的態度の克服

 もう一つの可能な社会を心に描き、信じ宣伝し、運動としてその理想のタネを蒔くべきだ。ユートピア運動に関心を寄せないのは、長い過去の失敗の経験から身に付いた「最初から失敗することを予測し、結果として予測通りになると思い込む」からなのか。

 長期的ビジョンがなければ、希望を語れないし、長期的な社会変革の戦略も生まれない。刹那的反抗が繰り返されるだけだ。

 反体制的メディアの人々にはそれぞれ優先したい課題があるだろうが、それと同時に、過去から引きずっているユートピア運動への冷笑的な態度を克服することが大事ではないか。ビジョンがない運動は分断され、最後は絶望に至り、社会的自滅を招くのではないだろうか。  (翻訳:編集部・脇浜)

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