【バリアのない街】日本は介護職にとって最悪だ

診療報酬と介護報酬の同時改定問題 遙矢当

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 医療・介護の世界は、相も変らぬ人手不足に悩まされています。加えて、これからは人としての「最期」を、誰もが寂しく過ごすことを強いる社会が始まろうとしています。2018年4月からは、診療報酬と介護報酬の同時改定が行われます。加えて医療政策の改定期にも当たり、推進派はその稀有な状況を見て、社会保障の「惑星直結」などと呼んでいます。

 深刻なわが国の社会保障の状況に対し、昨年の衆議院総選挙での論点から外し、国民的な議論を深めようとしなかった安倍政権は、ここでも責められるべきです。

 医療・介護とも、報酬の改定価格自体は「プラス(=事実上現状維持/17年12月現在)」と言われていますが、これを素直に喜ぶ医療・介護の現場の人たちはほぼ皆無でしょう。ひとえに、今回の改定をもってして、現場の、特に経済的な負担感はとても緩和されるとは言えないからです。

 例えば、昨年の総選挙後に自民党が、こつ然と「10年勤続の介護職員の給与に対し、8万円の処遇改善を実施する」という奇策を提示しました。しかしこれを細かく精査すると、一気に8万円も給与が上がる介護職員を抱える介護事業所は、特定の実績と規模を抱える事業所に対象が限られます。 労働法規が守られない介護事業所が多く、介護職員の多くが家庭との両立を強いられる女性が中心となる現状は変わりません。介護職員の待遇改善は、さらに遠のくのではないでしょうか。

 ご存知の通り、「人を大事にする」と見せかけ、その裏で非情冷淡なのが、安倍政権です。医療・介護の世界も例外なく、その姿を露呈させます。例えば、診療報酬の改定の議論では、ICT(註1)を活用した、へき地/離島医療の実施、などというトピックが出てきます。

 具体的にはSKYPEのようなネットを介した音声画像だけで、訪問をしない訪問診療を実施する、というような政策誘導が検討されています。

 確かにへき地や離島は、都市部で暮す者には想像を絶するほどの医療インフラの格差があり(=これだけでも「憲法違反」なのでしょう)、それを解消することを主眼とします。しかし、へき地や離島の人たちに、相対でのコミュニケーションを隔絶させんとする政策に見え始めてしまうのは、私だけなのでしょうか。
 これだけナショナリズムに突き進む現在のわが国の現状では、海外から医療・介護の専門職を招くという「開国」に対する期待も絶望的です。(註2)

ナショナリズムを越えて個と個のつながりを

 昨年の統計では、海外での勤務を希望する医療・介護職に人気がある受入国は、ドイツやオーストラリアなどが挙げられます。わが国はOECD加盟国の中で見ても、ダントツの人気の低さと言えます。出遅れというには事態が深刻で、2年後にオリンピックを開催すると喧伝する国としては、恥ずかしい限りだといえます。

 安倍政権が大好きな「おもてなし」「国際競争力」は、ここでは不要なのでしょうか。仮に、私が海外での医療介護勤務を希望するなら、この国は選ばないともいえます。悲惨な状況です。

 この状況を見て、私たちにできることは何でしょうか。それでも、この国に生きるものとして。できることはいくつかあるのでしょうし、すでに皆さんが実践しているものもあると思います。

 やはり、いつ破たんするか分からないわが国の財政ゆえに、「個と個のつながりを深め、自立する」という姿勢を持ち続けること、でしょうか。

 それは、かつての渡辺美樹氏(ワタミ創業者)が「国には頼らない」と標榜したような経済的なものではなく、個人と個人のつながりをさします。電力が停止するなら、不能になる前出のICTではなく、個と個が向き合う社会であるべきでしょう。 外交や外国の人々との交流にもいえます。いわば、自分を救うのは、自分で呼ぶ救急車ではなく、日々挨拶を交わし、共に街を育てる良き隣人であるべきではないでしょうか。

 黙っているだけでなく、常につながりを持ち続ける。「人民新聞」が続いてきたように、時にアナログな、地道な活動を忘れかけた社会は、医療・介護の世界

からみても危惧するものです。今年も新たに動きましょう

 

(註1)Information and Communication Technology=情報伝達技術
 インターネットをはじめ情報インフラを通じ、情報・知識の共有に焦点を当てる。
(2)「外国人介護士の現状―医療介護福祉政策研究フォーラム」(2017)
 http://www.mcw-forum.or.jp/image_report/ DL/20170420-1.pdf 

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