異例づくしのオウム元幹部7人の死刑執行

国家権力の強大な力を見せつけるのが目的 メディアの堕落 非人道的な公開処刑報道

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 7月6日、松本智津夫(麻原彰晃)さんをはじめオウム真理教元幹部7人が死刑執行された。テレビ各社は、大雨災害報道を臨時ニュースに切り替え、リアルタイムで執行状況を報道した。今回の死刑執行と報道の異常さについて、編集部で議論。問題点と見解をまとめた。(編集部・田中)

メディア動員した死刑の政治利用

 日本テレビは、8時41分に「松本智津夫死刑囚らの死刑執行手続きを始めた」と速報テロップを流し、処刑の進行状況を「今日中に7名の執行へ」という処刑予告とともに報道。フジテレビに至っては死刑執行の情報が入るたびに死刑囚の顔写真に「執行」のシールを貼るなど、異様な報道がなされた。東京拘置所前、広島拘置所前、後継3団体の本部前などにリポーターを配置し、速報テロップを流しながら「アレフ」本部前のリポーターに、「私は7時過ぎにアレフ前に来ておりますが…」などとレポートさせている。NHKも、立会人とみられる検察官の姿を朝7時に撮るなどしている。

 このことから、法務省当局は意図を持って一部のメディアに執行情報を事前に流していたことは明白だ。その結果、リアルタイムの死刑執行(殺人)をショー化し、無神経で非人道的な公開処刑的報道がなされた。今回の見せしめ的報道についてジャーナリストの斎藤貴男氏は、「死刑をリアルタイムで見せ物にすることで、国家権力の強大さと毅然とした態度を国民に見せつけた。意図的な公開処刑であり、死刑が政治に利用された」と語っている。

冤罪による刑執行の危険性

 また今回処刑された7人中、再審請求中が6人もいた。再審請求中は執行を見合わせるのが慣例であったが、今後は再審中でも執行する旨を明らかにした。昨年再審請求中だった別の事件の死刑囚3人に死刑が執行されたが、これは今回の大量処刑の布石であり、冤罪による死刑執行の危険性を増大させる。   1980年代には4件の死刑判決での再審無罪判決が出されており、最近では2014年静岡地裁で再審決定され、今年6月11日東京高裁から再審決定の取り消しという不当判決を受け、現在最高裁に特別抗告中である袴田事件や、足利事件や布川事件のように無期判決での再審無罪などが続いている。

 今年7月12日には、無期刑で服役中に75歳で亡くなった坂原弘さんの再審決定がなされるなど、冤罪事件が後を絶たないなか、再審請求中の者を処刑することは断じて許されない。

死刑を命じ宴会に興じる川上法相の非人間性

 上川法相は、前回在任中と合わせて10人の死刑を命令しており、安倍政権下では28人の死刑執行が行われた。翌日には自分の責任で7人の死刑執行が行われるのを承知しながら自民党の宴会に笑顔で参加した法相は、6日の臨時記者会見で「死刑執行は‥中略…または再審の事由がないと認めた場合に初めて命令を発する」と述べながら、「再審請求を行っているから執行しないということではない」とも述べた。「慎重にも慎重な検討を重ねた上で、命令を出した」と言うが、なぜこの時期なのか? なぜこの7人なのか? 死刑執行ができる精神状態であったのか? などの質問には一切答えていない。

 戦後最多の7人の大量処刑を行い、マスコミを使い、死刑執行を公開処刑ともいえる見せしめ的な報道をさせることが、「慎重にも慎重な検討を重ねた上で」の結果だったのかもしれない。

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