【バリアのない街】利権がついてまわる介護事業 「業界に顔が利くコネ」「大手ゼネコン」の存在

介護報酬改定2018について(後編)

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遙矢当

 「あの人に相談すれば大丈夫です。必ず話は通るから」―介護事業者からよく聞く話だ。「あの人」とは、業界に顔が利く人物で、事業計画は瞬時に「既成事実」かのようになる。

 なぜ、介護に利権が付いて回るようになったのか。いくつかの答えがあるかもしれない。利権=金だ。介護が「お金」を生む以上、利権が生まれ、巣食う者が現れる。この連鎖を国自らが断ち切らない限り、本当の意味での介護は実現できないのだろう。

 この構図は、森友・加計学園をみてもわかるとおり教育分野にも当てはまる。例えば、医療や介護施設を建てる計画があれば、大手ゼネコンが駆けつける。施主の法人に対し、凄まじいプレゼンテーションが行われる。辺野古基地移転でも主力となる大成建設、不適切な会計で話題の西松建設などは、医療介護の領域でも常連だ。補助金・助成金などの公金が確実に入る案件は、ゼネコン側から見れば手放せない金づるだ。

 次に人材派遣・紹介会社だ。医療・介護業界は人材あっての事業だが、今や自力での人材確保は限界だ。パソナなどは、医療介護に特化した人材派遣、紹介事業部門を運営している。人材難の事業所・法人にアプローチし、常識を超えさえする高待遇で確保しておいた医療・介護職をマッチングさせる。そこで100万円単位の紹介手数料を請求して、人材難の事業所に感謝させる。高額な紹介手数料が原因で経営難に陥る法人も少なくない。

 介護業界の人材紹介会社として名高い「エス・エム・エス」(東京都港区)などは、多くの介護事業所が、一度はヘルパーやケアマネージャーなどの人材の紹介を受けた経験があるはずだ。

 こうした人材派遣会社の本音は、医療介護業界の待遇改善に消極的だ。賃金が上がると紹介先が減り、収益減に直結するからだ。最近では、医療職、介護職と結託し、事業所から紹介手数料を「抜く」という、もはや詐欺と呼べる人材会社も出てきているという。

 例えば、人材会社があらかじめ結託している看護師や介護職を、人材の確保に苦戦している医療機関や介護施設に紹介する。人材会社は人材の年収の20%程度の紹介手数料が受け取れる。すると、人材会社は、事業者側が定めた3カ月程度の試用期間が過ぎると、人材に退職の合図を送り、試用期間内で退職させてしまうという手法だ。医療機関などは、試用期間なので引き止められず、紹介手数料だけ取られ、あえなくまた退職されてしまうという流れだ。まさに「巣食う」という表現がふさわしい。

ゼネコンと人材派遣会社に癒着する政治家

 介護業界が抱える「サービス不足」と「人材難」の2大テーマに対し、厚生労働省は補助金、助成金を支給して解決するという小手先的手法で臨んできた。だが、この課題に深く関与するゼネコンも人材会社は、政党や政治家への働きかけを欠かさない。献金も活発に行われており、現状の収益構造を変える必要のない彼らは、現状維持の方向で政治家を動かそうとする。

 今後、介護業界を上回る利権が期待できる産業が出てくるなら、彼らの関心はそちらに向かうかもしれないが、私たちはこうした現状を踏まえて、介護を見つめ、声をあげるべきだ。誰がお金を出すかではなく、誰のための介護か。

 そんな中、今回の総選挙で吉報が届いた。北海道第5区で池田真紀さん(立憲民主党)の当選だ。彼女は私が20代の頃の職場の同期でもある。シングルマザーの彼女は、「子育てと福祉介護を政治の中で発信していく」と語っている。

 ひっ迫する子育て、医療・介護問題に対し国会の場で声をあげようとする彼女のような人材を増やす努力を重ね、少しでも介護現場の現状に光が差すような活動を目指したい。

▼「介護の現場を守るための署名」について(全国老人保健施設協会HP)

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