2/17豊中市(大阪)「防犯カメラ」で地域は安全になるのか 講演報告集会

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あっちにカメラ、こっちもカメラ…街じゅう監視カメラだらけ!

管理・監視社会に反対する大阪ネットワーク 廣瀬 正明

 2月17日、豊中市で「『防犯カメラ』で地域は安全になるのか 講演報告集会」を開催しました。豊中市では1230台もの監視カメラを設置する事業を進めていますし、箕面市(大阪)や伊丹市(兵庫)でも同様の動きか見られます。集会は防犯効果の定かではない「防犯カメラ」について考えるためです。集会ではまず、釜ヶ崎監視カメラ訴訟の代理人の大川一夫弁護士が以下のような講演をおこないました。

官民一体の「安全・安心まちづくり」

 2004年の警察白書で「地域社会との連携」を打ち出して以降、警察・自治体・地域住民一体型の「安全・安心まちづくり」が始まった。コンビニを第2の交番化し、タクシーを第2のパトカー化していくのである。タクシーは前後左右を写せる「ムービングアイ」を搭載しているが、2012年3月に作成された協定書には「㈱国際興業大阪と東淀川警察署は、ムービングアイ包囲網を構築、活用する」と書かれている。
 自治体の街頭監視カメラは、補助金によって拡がりつつある。警察の関与や運用の実態は定かでないが、武蔵野市のように設置は自治体だが運用は警察が行っている例や、映像を同時に警察に配信している小野市の実例もわかってきた。
 防犯カメラで犯罪は防げるのかどうかは、良くわかっていないが、日本は相対的に「安全」な国であり、体感治安論は根拠がない。そもそも、監視カメラでは身内からの犯罪は防げない。

監視カメラの問題点

 監視カメラは、(1)カメラで写される不快感、(2)防犯と監視の不徹底、(3)プライバシー権、(4)警察の濫用、といった問題点がある。「釜ヶ崎監視カメラ撤去訴訟」の判決では、(1)録画は許されない、(2)撮影もプライバシー違反だが、一定の場合には例外として以下の5要件のもとで許される、とした。カメラの設置・使用にあたっては、(1)目的が正当であること、(2)客観的かつ具体的な必要性があること、(3)設置状況が妥当であること、(4)設置および使用による効果があること、(5)使用方法が相当であること。

法的規制が必要

 防犯カメラの効果と負担は冷静に議論すべきで、法的規制が必要だ。駅やスーパーや書店や公道など、私たちはどこで撮影されているかわからない。プライバシー権は自己情報コントロール権である以上、本人の承諾を得ずに撮影するのは問題だと言える。
 そもそも犯罪は格差社会が生みだしているのだから、犯罪防止のためには、全体的な施策が必要である。市民が警察を監視しながら「安全」の確保を警察に命じ、市民がお互いを信用し「安心」できるような社会を構築することが必要だ。国民が主権者であり、警察や行政には主権者である私たちを幸せにするために権力を与えていることを再確認すべきだ、と大川弁護士は話された。

 

防犯カメラ設置の実態

 次に、各市の議員が防犯カメラ設置の実態を報告しました。
▼箕面市・中西智子市議
 「諸悪の根源とも言われている箕面市からまいりました」と挨拶して、以下のような話をした。―箕面市は2014年度に通学路に750台、翌15年と16年度に自治会に対する防犯カメラ設置補助(9割補助、自治会負担は2万円)で750台、さらに市内の全公園に300台のカメラを設置した。13万5千人の人口に対し1800台の防犯カメラが設置されている。これは、100平米に一台、電柱9本ごとに1台、道路230メートルに一台、カメラを設置していることになる。
 行政に「抑止力というのなら、設置場所の詳細情報を市民に公開すべきだ。そうでなければ抑止効果はない」と言っても、公開しようとしない。実際の犯罪件数は、1年目=950件、2年目=950件と同じであった。3年目は850件になっているが、全国的に犯罪が減っているということを考えれば、防犯効果があったとは言えない。
 昨年12人の認知症高齢者が行方不明になったが、防犯カメラは役にたたず、全員亡くなられておられた。防犯カメラを設置するより、高齢者に声もかけられない地域のあり方を問題とすべきでないか。

▼豊中市・木村真市議
 従来は、自治会や町内会に50%の助成金を出していたが、今年度から市が全額費用を負担し、直接設置することになった。41校区に各30台で1230台を設置するという。どの場所に設置するかは、校区でワークショップをして決めている。3月から設置し始める予定で、データは1週間保存してその後は上書きをしていく。設置場所は情報公開せず、警察にデータを渡す際には、市の職員と一緒に見て必要な部分を渡すことになっている。ランニングコストは、年間1億円以上かかる。議会で防犯カメラのことを問題にする議員は自分一人だけだ。

▼伊丹市・大津留求市議
 伊丹市は防犯カメラの設置場所を公開しており、市のホームページで見ることができる。議会では自分一人だけが防犯カメラを問題にしている。25平方㎞の狭い市に、コンビニの700台と道路に1000台の防犯カメラが設置されている。伊丹市の特徴は、(1)箕面市を手本にした、(2)国の有利な財政を活用、(3)自治会を地域ごと巻き込むこと、だ。地域懇談会では、522名中510名が賛成したとのこと。
 社会実験として、全国に先駆けて監視カメラとビーコン受信機(小型の無線発信装置。持っている子どもや高齢者の位置確認が行える)を設置した。国の「地域再生戦略交付金」による「安全・安心社会インフラ整備事業」として実施され、インフラ整備は市が行い、事業は民間の阪急阪神ホールディングスが「ミマモルメ」という商品名で行っている。管理は市が行い、5年間はカメラを増やさないことを決めている。

 集会前日の朝日新聞・夕刊には「防犯カメラ 捜査の眼に 大阪府警、自治体と異例の協定」の見出しで、府内17市町村と大阪市内4行政区が協定を結び、警察が防犯カメラの映像を自治体への事前連絡なしに引き出せるようになった、と報じた。府内に設置されている1万9944台のうち3千台が協定の対象となる。
 集会には、宝塚や西宮、島本町などの議員も参加した。各地域の情報を交換しながら、野放図な監視カメラの拡大に反対し、法的規制を求める声を広げていきたいと思っている。

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