戦前の弾圧、忘れるなかれ

安倍政権に抵抗する公明党支持者

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創価学会員 霊崎信行さんインタビュー

 5歳で入信し、60年間創価学会員として活動する霊崎信行さん。霊崎さんに(1)参院選への評価、(2)公明党が与党に留まる理由、(3)改憲問題に対する学会員の関心、をインタビューした。
 創価学会は戦前、国家神道を拒絶し、国家権力から弾圧を受けた。戦後は貧困層と共に福祉と平和を希求する取り組みを行ってきた過程がある。立脚点は異なっても、真摯に向き合う姿勢に連帯と敬意を表したい。

(編集部・ラボルテ)

―参院選の評価について
 安倍政権の暴走を止めるブレーキ役を期待しているので、公明党が全員当選したことは良かったのですが、自民党も勝ってしまいました。「アベノミクスの失敗」は国民の多くが感じていると思いますが、民主党政権時の失望感が未だに根強く尾を引いているようです。野党は、共産党の方針転換による一人区の野党共闘でかろうじて大敗を免れた、というところでしょう。

―自民党の改憲案への評価は?
 自民党の改憲草案については、立憲主義に反し、改悪としかいえない最悪の草案です。(1)「公の秩序」を理由にした国家権力の強化、(2)緊急事態条項による国民の権利の制限、(3)憲法9条改定の問題、などがあります。9条の「戦争放棄」は、平和を求める世界中の人々の理想です。日本は東西冷戦時代に解釈改憲により専守防衛の自衛隊を持ちましたが、「自衛隊の保有は9条と矛盾しているから9条を変える」というのは、「理想」を「現実」に近づける本末転倒なものです。
 日本は唯一の被爆国として核廃絶、軍縮をリードし、9条の理想に近づけていく使命があると考えます。アメリカと中国という核を持つ大国に挟まれた小さな島国「日本」が軍事力で対抗すれば、軍拡競争を招くだけ、行き着く先は核武装という最悪の結果となるでしょう。池田名誉会長の「9条を守れ」という指導にも反します。
 公明党の山口代表は、「9条については、昨年の安保法制で十分議論したので当面変える必要はない」と明言しています。公明党は「3要件の歯止めによって個別的自衛権の範囲内に止めた」と説明していますが、ここまでが限界です。自民党はその先へ駒を進めようとするでしょう。

―公明党はなぜ与党に留まるのでしょうか。
 公明党は野党時代に福祉の党を標榜し、教科書無償配布や児童手当などの実積があります。与党に加わり、訓練・生活支援給付金制度の創設、子ども医療費助成の拡充、高額療養費制度の改善など、福祉政策が実現しやすくなった一方で、非正規雇用問題やアベノミクス等の経済政策、防衛や外交問題で譲歩せざるを得ない状況にあります。
 議員の立場に立てば、与党として官僚と意思疎通ができ、政策も実現しやすくなります。かつての集票力を失いつつある自民党にとっても、創価学会票は大きな魅力といえるでしょう。現状は、大きなトラブルなく妥協が成立している状況だと思います。

拡大する反自民

―改憲問題に対する学会員の関心は?
 学会員のなかで改憲問題について自ら学び、考え、行動しているのは、一般世間の人たちと同じく少数派だと思います。「信仰の同志でもある公明党を信じています、ついていきます」のような人が多いのが実情です。
 しかし、参院選では一人区で、公明党支持者の26%が野党統一候補に入れました。去年の安保法制以来、創価学会の三色旗を掲げて集会やデモに参加する人も現れました。防衛や経済に関わる政策で、学会員の中で組織の方針に反する意見が出始めたことは、民主主義の健全な姿だと思います。

―公明党の掲げる加憲とは? 今後の動向によって自民党と対立する可能性は?
 現行憲法は1946年制定ですから、当時には想定もされなかった時代の変化があります。例えば、ネット社会におけるプライバシーの問題や地球環境問題についての条項が考えられるでしょう。これらを加えることが公明党の掲げる加憲であって、基本的人権の尊重や平和主義を後退させることが目的ではありません。
 創価学会の歴史をふりかえれば、初代会長・牧ロ常三郎と2代会長・戸田城聖は戦時中、軍国主義の精神的支柱だった国家神道を批判し、神札を拒絶したことで治安維持法違反により逮捕、牧口初代会長は70歳の高齢で殉教しました。したがって安倍政権の改憲草案のような日本会議的ナショナリズムとは相容れません。
 今後は、憲法審査会で改憲案を具体的に検討していくことになるでしょう。国民の大半が、「護憲か? 改憲か?」の粗雑な論争から、具体的な中身を議論することを通して、憲法に対する意識が高まると思います。うまくいけば日本の民主主義の進展に寄与しますが、報道の自由の確保と憲法審査会の議論の公開がポイントになるでしょう。憲法審査会は議席に応じた配分なので、非公開だと自民党のペースになる可能性が大きく心配です。
 安倍政権は、9条は当面触れず、大規模災害対応を名目として、緊急事態条項から手をつけていくでしょう。憲法によって国民の権利を制限し、国家権力の強化に先鞭をつけたい、という意図が丸見えです。絶対に改悪を許してはなりません。

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